ミシェル=ブリュネ著、山田美明訳『人類の原点を求めて』

 まだ日付は変わっていないのですが、9月23日分の記事として掲載しておきます。原書房より2012年7月に刊行されました。著者は、アウストラロピテクス=バーレルガザリ(アファレンシスと同種との見解のほうが優勢かもしれません)やサヘラントロプス=チャデンシスの発見・研究で有名な古人類学者で、原書の刊行は2006年です。日本語版序文でも触れられていない原書刊行以降の研究にて、バーレルガザリとチャデンシスのより正確な年代が推定されており、このブログで取り上げたことがあります。
https://sicambre.seesaa.net/article/200804article_9.html

 本書は、チャデンシスに関する記述が多くなっていますが、チャデンシスの特徴や人類史上の位置づけを一般向けに分かりやすく解説しているだけではなく、人骨発見へといたる具体的な苦労や著者の伝記についてもかなりの分量が割かれており、読み物としてなかなか面白くなっています。著者の研究者としての姿勢も述べられており、著者は、世界各地の研究機関に保管されている貴重な人骨の解析・比較などによる「研究室内」での研究よりも、野外でたいへんな苦労をしつつ人骨の発見を目指し、それに基づいて研究を行なうほうをよしとしています。

 著者はチャデンシスの発見後、さらなる同年代の人骨の発見のために、チャデンシスの発見されたチャドと、当時は同じ生物地理区だったと思われるリビアでの発掘に取りかかろうとします。フランスのシラク大統領(当時)のリビア公式訪問に同行した著者は、シラク大統領の紹介にてリビアの最高権力者カダフィ大佐(当時)と面会し、リビアでの発掘調査の許可を得ます。ただ、昨年執筆された本書の日本語版序文でもリビアでの発掘成果については触れられていませんから、その後のリビア情勢の激変により、リビアでの発掘はまだ大きな成果があがっていないのかもしれません。

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