ヨーロッパ南部のネアンデルタール人による大型獣の狩猟

 まだ日付は変わっていないのですが、9月11日分の記事として掲載しておきます。ヨーロッパ南部のネアンデルタール人による狩猟についての研究(Talamo et al., 2012)の要約を読みました。狩猟用(時として対人用?)武器としての尖頭器は、中期更新世末期のヨーロッパ・アフリカ・中東に現われる主要な革新の構成要素とされており、現生人類(ホモ=サピエンス)とネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の両集団に見られます。この研究では、大西洋側の南ヨーロッパのネアンデルタール人集団によって用いられた石器の顕微鏡分析により、狩猟用武器としての尖頭器の技術は、この地域のネアンデルタール人集団の間で広く用いられており、頻繁に見られるものだった、と指摘されています。

 また、こうした石器を用いた狩猟技術は、ヨーロッパ南部において海洋酸素同位体ステージ6の15万年前頃に現われ、海洋酸素同位体ステージ6~5~4という大きな環境変化の時期に見られ、大型哺乳類の狩猟と関連づけられています。こうした革新が、ヨーロッパ南部に現生人類が進出しているずっと前から見られ、ネアンデルタール人によって担われていたという事実には大きな進化的意義がある、とこの研究では指摘されています。ネアンデルタール人が大型哺乳類の狩猟を行なっていたことは確かでしょうが、同じ頃から海産資源の利用も見られることから、ネアンデルタール人集団はつねに大型哺乳類の狩猟に依存していたというわけではなく、状況に応じて生計手段を変える柔軟性を持っていたと思われます。


参考文献:
Lazuén T.(2012): European Neanderthal stone hunting weapons reveal complex behaviour long before the appearance of modern humans. Journal of Archaeological Science, 39, 7, 2304–2311.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jas.2012.02.032

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