中部~上部旧石器移行期のヨーロッパにおける火山噴火の影響
まだ日付は変わっていないのですが、8月23日分の記事として掲載しておきます。現生人類(ホモ=サピエンス)がヨーロッパに進出した中部~上部旧石器移行期のヨーロッパにおける、現生人類とネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)への影響についての研究(Lowe et al., 2012)の要約を読みました。ヨーロッパにおける中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行期は、現生人類のヨーロッパへの進出時期に相当し、その後まもなく(とはいっても、個人の寿命を基準に考えると、かなり長かったはずですが)ネアンデルタール人が絶滅したことから、大きな注目を集めてきました。
この研究では、大規模な噴火と気候悪化が、この時期のヨーロッパにおける現生人類の拡散とネアンデルタール人絶滅の要因である、との仮説が検証されています。この検証で用いられたのは40000年前頃の火山灰層の記録で、肉眼では確認できないような火山灰層の発見により、さらに精度の高い記録が得られました。こうした火山灰層の記録と古気候の記録との照合の結果、大規模な噴火や寒冷化はネアンデルタール人と現生人類に持続的な影響は与えておらず、ネアンデルタール人にとって自然災害よりも現生人類の侵入のほうが脅威であった、とこの研究では主張されています。おそらく、ネアンデルタール人絶滅の決定打になったのは現生人類との競争的接触だったでしょうが、気候変動など自然の要因も少なからずあったのではないか、と思います。
参考文献:
Lowe J. et al.(2012): Volcanic ash layers illuminate the resilience of Neanderthals and early modern humans to natural hazards. PNAS, 109, 34, 13532-13537.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1204579109
この研究では、大規模な噴火と気候悪化が、この時期のヨーロッパにおける現生人類の拡散とネアンデルタール人絶滅の要因である、との仮説が検証されています。この検証で用いられたのは40000年前頃の火山灰層の記録で、肉眼では確認できないような火山灰層の発見により、さらに精度の高い記録が得られました。こうした火山灰層の記録と古気候の記録との照合の結果、大規模な噴火や寒冷化はネアンデルタール人と現生人類に持続的な影響は与えておらず、ネアンデルタール人にとって自然災害よりも現生人類の侵入のほうが脅威であった、とこの研究では主張されています。おそらく、ネアンデルタール人絶滅の決定打になったのは現生人類との競争的接触だったでしょうが、気候変動など自然の要因も少なからずあったのではないか、と思います。
参考文献:
Lowe J. et al.(2012): Volcanic ash layers illuminate the resilience of Neanderthals and early modern humans to natural hazards. PNAS, 109, 34, 13532-13537.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1204579109
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