アフリカ南部における現代的行動の年代
アフリカ南部における現代的行動の年代についての研究(d’Errico et al., 2012)の要約を読みました。近年の考古学の研究成果によると、顔料・ビーズ・洗練された石器や骨器の使用といった現代的行動の考古学的指標は、アフリカ南部では75000年前にまでさかのぼることが確認されています。そうした考古学的指標の多くは60000年前までに失われており、アフリカ南部では後期石器時代になって再び出現します。このことから、現代的行動の起源は75000年前までさかのぼるものの、しっかりと確立する前に失われてしまった、と考えられます。
アフリカ南部における「しっかりと確立した現代的行動」の具体例として、サン人の狩猟採集文化が挙げられますが、その起源は20000年前までさかのぼる、というのがこれまでの通説でした。しかしこの研究では、南アフリカ共和国のブロンボス洞窟で出土した人工物のうち、有機物で作られたものの年代を再測定し、サン人的な狩猟採集文化の起源は40000年以上前までさかのぼる、と主張されています。それらの人工物は、木製の掘るために用いられたと考えられる棒(39000年前頃)や、鏃に似た骨器や、柄の接着剤として用いられたであろう蜜蝋・樹脂・卵の混合物(40000年前)や、海洋性の貝の殻や駝鳥の卵殻で作られたビーズ(42000年前頃)などで、24000年前頃に毒物を用いた痕跡も確認されています。
以上、この研究の概要について述べてきましたが、おそらく、少なくとも一部の現代的行動の起源はかなり前までさかのぼり、それは解剖学的現代人の起源よりもさらに前までさかのぼる可能性が高いでしょう。しかし、そうした現代的行動が現在まで継続しているとは限らず、各地域で散発的に出現しては人口減などにより失われ、再び出現するということが何度も繰り返されたのだろう、と思います。おそらくほとんどの現代的行動は、すでに初期の解剖学的現代人の時点で潜在的に可能であり、現代的行動のうち一定上の割合のものは、現生人類(ホモ=サピエンス)とネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)との共通祖先の時点で潜在的に可能だったのではないか、とさえ私は考えています。それ故に、さまざまな現代的行動が地理的・時間的に散発的に出現したのだろう、と思います。
参考文献:
d’Errico F. et al.(2012): Early evidence of San material culture represented by organic artifacts from Border Cave, South Africa. PNAS, 109, 33, 13214-13219.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1204213109
アフリカ南部における「しっかりと確立した現代的行動」の具体例として、サン人の狩猟採集文化が挙げられますが、その起源は20000年前までさかのぼる、というのがこれまでの通説でした。しかしこの研究では、南アフリカ共和国のブロンボス洞窟で出土した人工物のうち、有機物で作られたものの年代を再測定し、サン人的な狩猟採集文化の起源は40000年以上前までさかのぼる、と主張されています。それらの人工物は、木製の掘るために用いられたと考えられる棒(39000年前頃)や、鏃に似た骨器や、柄の接着剤として用いられたであろう蜜蝋・樹脂・卵の混合物(40000年前)や、海洋性の貝の殻や駝鳥の卵殻で作られたビーズ(42000年前頃)などで、24000年前頃に毒物を用いた痕跡も確認されています。
以上、この研究の概要について述べてきましたが、おそらく、少なくとも一部の現代的行動の起源はかなり前までさかのぼり、それは解剖学的現代人の起源よりもさらに前までさかのぼる可能性が高いでしょう。しかし、そうした現代的行動が現在まで継続しているとは限らず、各地域で散発的に出現しては人口減などにより失われ、再び出現するということが何度も繰り返されたのだろう、と思います。おそらくほとんどの現代的行動は、すでに初期の解剖学的現代人の時点で潜在的に可能であり、現代的行動のうち一定上の割合のものは、現生人類(ホモ=サピエンス)とネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)との共通祖先の時点で潜在的に可能だったのではないか、とさえ私は考えています。それ故に、さまざまな現代的行動が地理的・時間的に散発的に出現したのだろう、と思います。
参考文献:
d’Errico F. et al.(2012): Early evidence of San material culture represented by organic artifacts from Border Cave, South Africa. PNAS, 109, 33, 13214-13219.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1204213109
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