大河ドラマ『平清盛』第26回「平治の乱」
今回から3回にわたって平治の乱とその結末が描かれます。反信西で一致した信頼・経宗・惟方らが決起し、義朝をはじめとする武士を動員して後白河院・上西門院(統子)・二条帝を幽閉します。しかし、信西は師光(西光)たちと辛くも脱出し、信西を取り逃がした義朝は、信西が変装していることを疑ったのか、女性・子供も容赦なく射るよう命じますが、この様子を見た源頼政は、義朝に不信感を抱くようになります。信西の妻の朝子も辛うじて脱出に成功し、六波羅の清盛の館を訪ね、夫を救うよう時子に頼みます。時子はただちに忠清を遣わして、熊野詣に向かう途中の清盛に信頼・経宗・惟方・義朝らの決起を知らせます。
時子からの報せにより都での変事を知り、ただちに帰京しようとした清盛ですが、軽装であるために、重盛は清盛に自重するよう進言します。しかし、筆頭家人の家貞が万一のためにと武具を持ってきており、清盛はただちに帰京を決意します。清盛の留守を預かる時子・盛国・基盛らは、信頼たちが後白河院・二条帝を確保し、清盛にとって盟友とも言える信西が朝敵となった状況にどう対応すべきか、議論するが結論が出ません。時子は一門の動揺を抑えようとして、清盛が信西を見捨てるはずはないと断言し、盛国は、清盛の帰還を待つことにしよう、と一門を説得します。
帰京しようとした清盛一行ですが、義朝の長男の義平が大軍を率いて待ち構えているという噂が流れたため、足踏み状態となります。ここで重盛は清盛に、才の優れた信西がいる限り武士が世の頂点に立つことはないので、信西を救出しても伊勢平氏の利益になるとは思えず、このまま信西が滅びた後に信頼を討ち、源氏を倒せばすべてが手に入るのではないか、と進言します。現実的な父と理想主義的で正義感の強い息子という対比が、この作品の伊勢平氏一門に通底する話の構造になるのかと考えていたのですが、どうもそう単純なものではなさそうで、重盛は父の清盛と比較して生真面目であり、社会にたいして斜めに構えて無頼を気取るのではなく、純粋に伊勢平氏一門の繁栄のために動こうとしているようなので、時としてこのように冷たい判断をすることになるのでしょうか。
正直なところ、この進言は多分に結果論的解釈の反映された創作で、私の好みではありません。確かに、平治の乱で最大の利益を得たのは伊勢平氏一門で、平治の乱は清盛の独り勝ちと言っても大間違いではない結果をもたらしました。まず、後白河院側近の信西とその一門(信西は、息子を通じて二条帝ともつながりがありましたが)が失脚し、次に後白河院の側近で平治の乱の中心的人物とも言えた信頼が失脚します。信頼が失脚する契機となったのが、帰京した清盛と二条帝親政派の経宗・惟方が藤原公教の仲介により提携し、二条帝と後白河院を清盛たちが確保したことでした。
信頼の失脚にともない、信頼に従属的な立場にあり、坂東で勢力を拡大するなど有力な武士の棟梁として成長しつつあった義朝(この作品では、平治の乱以前から信頼と密接な関係にあったとはされていませんが)も敗死にいたります。これで一応平治の乱は終結したのですが、この後、親政派の経宗・惟方は後白河院を挑発して無礼な振る舞いに及び、激怒した後白河院は清盛に泣きついて経宗・惟方を捕縛させ、公卿に拷問を加えるという「非常識」な手段を用いて、二人を配流処分とします。
さらに、二条帝親政派で、都の武士として清盛に並ぶ位階を有しており、平治の乱では経宗・惟方同様に信西排除で決起し、後に信頼を見限った源光保が、信西殺害の責任を問われたのか、薩摩への配流処分となり、薩摩で殺害されます。最後に、清盛と経宗・惟方を提携させた藤原公教が急逝し、清盛にとって独り勝ちとも言えるような状況となります。ここまで、平治の乱の勃発からわずか半年ちょっとのことでした。都の有力な武士団の棟梁だった源義朝・源光保が失脚し、後白河院の有力な側近であった信西・信頼が死亡し、いったんは勝ち組になったかに見えた、二条帝親政派の経宗・惟方が失脚し、最終的な勝者の一員になりかけた公教が急逝したことにより、清盛と伊勢平氏の地位は飛躍的に上昇しました。
これを安っぽい話に仕立て上げると、熊野詣からすべては清盛の思惑通り進み、最後に公教を毒殺して清盛がほくそ笑む、という展開になりそうですが、さすがにそこまで先を読んで行動することは現実的ではないでしょう。今回の重盛の発言も、そこまで先を読んでのものではありませんでしたが、不自然に思えてしまったのは残念でした。重盛の進言を受けて清盛は、信西との出会いからこれまでの関係を想起し、信西こそ真の友であることを改めて確信し、信西を救うべく都へと急ぎます。次回描かれるであろう清盛と義朝との一騎討ちとともに、あらすじを読んでここが残念なところだったのですが、この作品では清盛と信西は政治的盟友関係にあるとされているので、政治的利害関係から信西を見捨てるわけにはいかなかった、という側面を強調したほうがよかったように思います。
その信西は、都を脱出して師光らをさらに遠くに逃そうとし、自身は山中で一人穴にこもり、清盛の帰還と乱の終結を待ちます。しかし、信西に心酔している師光は信西を見捨てることはできず、信西が隠れた穴の側で信西を見守り続けることにします。信西は師光に、自分が的に見つかっても助けようとせず、最期まで見届けよと命じて、西光という法名を与えます。穴の中で衰弱した信西は敵の兵士たちに発見されますが、この時、第2回の清盛との出会いを思い出し、清盛が助けに来たのだと錯覚します。穴から引きずり出された信西は敵に殺される前に自害しますが、この様子を師光が見届けていました。前回までに師光の信西への傾倒が描かれていたので、なかなかよい場面になっていたと思います。
信西の首は都で晒され、帰京した清盛はその様子を見て義朝への怒りの感情を表に出し、義朝との対決に闘志を燃やす、というところで今回は終了です。おそらく、清盛と信西・義朝との関係など、史実と異なる設定がかなり多いのでしょう。とくに、義朝と清盛を宿命の好敵手同士として描いたことにはかなりの無理があると思うのですが、この作品の前半の基調となっており、創作のテレビドラマとしては成功しているように思うので、仕方ないのかな、とは思います。途中から登場の信頼・成親・経宗・惟方なども含めて、朝廷の主要人物はおおむね濃いキャラなので、相変わらず面白いのですが、いかに政変の最大の立役者とはいっても、信頼が経宗に偉そうな口をきいて上座にいたのはどうなのかな、とは思います。
今回は、平治の乱そのものを描くということで、かなり緊張感溢れる展開になるのかと思っていたのですが、正直なところ、期待外れだった感は否めません。清盛と信西の関係が個人的な友情関係を強調したものとなったこともあって、政変という緊迫した状況下での回想場面が緊張感を削ぐことになってしまったことしもあるでしょうか。残念ながら、今回は序盤の伏線があまり効果的ではなかったように思います。次回は、不安な清盛と義朝の一騎討ちが描かれるようですが、なんとか作品を壊さないていどのものになることを願っています。
時子からの報せにより都での変事を知り、ただちに帰京しようとした清盛ですが、軽装であるために、重盛は清盛に自重するよう進言します。しかし、筆頭家人の家貞が万一のためにと武具を持ってきており、清盛はただちに帰京を決意します。清盛の留守を預かる時子・盛国・基盛らは、信頼たちが後白河院・二条帝を確保し、清盛にとって盟友とも言える信西が朝敵となった状況にどう対応すべきか、議論するが結論が出ません。時子は一門の動揺を抑えようとして、清盛が信西を見捨てるはずはないと断言し、盛国は、清盛の帰還を待つことにしよう、と一門を説得します。
帰京しようとした清盛一行ですが、義朝の長男の義平が大軍を率いて待ち構えているという噂が流れたため、足踏み状態となります。ここで重盛は清盛に、才の優れた信西がいる限り武士が世の頂点に立つことはないので、信西を救出しても伊勢平氏の利益になるとは思えず、このまま信西が滅びた後に信頼を討ち、源氏を倒せばすべてが手に入るのではないか、と進言します。現実的な父と理想主義的で正義感の強い息子という対比が、この作品の伊勢平氏一門に通底する話の構造になるのかと考えていたのですが、どうもそう単純なものではなさそうで、重盛は父の清盛と比較して生真面目であり、社会にたいして斜めに構えて無頼を気取るのではなく、純粋に伊勢平氏一門の繁栄のために動こうとしているようなので、時としてこのように冷たい判断をすることになるのでしょうか。
正直なところ、この進言は多分に結果論的解釈の反映された創作で、私の好みではありません。確かに、平治の乱で最大の利益を得たのは伊勢平氏一門で、平治の乱は清盛の独り勝ちと言っても大間違いではない結果をもたらしました。まず、後白河院側近の信西とその一門(信西は、息子を通じて二条帝ともつながりがありましたが)が失脚し、次に後白河院の側近で平治の乱の中心的人物とも言えた信頼が失脚します。信頼が失脚する契機となったのが、帰京した清盛と二条帝親政派の経宗・惟方が藤原公教の仲介により提携し、二条帝と後白河院を清盛たちが確保したことでした。
信頼の失脚にともない、信頼に従属的な立場にあり、坂東で勢力を拡大するなど有力な武士の棟梁として成長しつつあった義朝(この作品では、平治の乱以前から信頼と密接な関係にあったとはされていませんが)も敗死にいたります。これで一応平治の乱は終結したのですが、この後、親政派の経宗・惟方は後白河院を挑発して無礼な振る舞いに及び、激怒した後白河院は清盛に泣きついて経宗・惟方を捕縛させ、公卿に拷問を加えるという「非常識」な手段を用いて、二人を配流処分とします。
さらに、二条帝親政派で、都の武士として清盛に並ぶ位階を有しており、平治の乱では経宗・惟方同様に信西排除で決起し、後に信頼を見限った源光保が、信西殺害の責任を問われたのか、薩摩への配流処分となり、薩摩で殺害されます。最後に、清盛と経宗・惟方を提携させた藤原公教が急逝し、清盛にとって独り勝ちとも言えるような状況となります。ここまで、平治の乱の勃発からわずか半年ちょっとのことでした。都の有力な武士団の棟梁だった源義朝・源光保が失脚し、後白河院の有力な側近であった信西・信頼が死亡し、いったんは勝ち組になったかに見えた、二条帝親政派の経宗・惟方が失脚し、最終的な勝者の一員になりかけた公教が急逝したことにより、清盛と伊勢平氏の地位は飛躍的に上昇しました。
これを安っぽい話に仕立て上げると、熊野詣からすべては清盛の思惑通り進み、最後に公教を毒殺して清盛がほくそ笑む、という展開になりそうですが、さすがにそこまで先を読んで行動することは現実的ではないでしょう。今回の重盛の発言も、そこまで先を読んでのものではありませんでしたが、不自然に思えてしまったのは残念でした。重盛の進言を受けて清盛は、信西との出会いからこれまでの関係を想起し、信西こそ真の友であることを改めて確信し、信西を救うべく都へと急ぎます。次回描かれるであろう清盛と義朝との一騎討ちとともに、あらすじを読んでここが残念なところだったのですが、この作品では清盛と信西は政治的盟友関係にあるとされているので、政治的利害関係から信西を見捨てるわけにはいかなかった、という側面を強調したほうがよかったように思います。
その信西は、都を脱出して師光らをさらに遠くに逃そうとし、自身は山中で一人穴にこもり、清盛の帰還と乱の終結を待ちます。しかし、信西に心酔している師光は信西を見捨てることはできず、信西が隠れた穴の側で信西を見守り続けることにします。信西は師光に、自分が的に見つかっても助けようとせず、最期まで見届けよと命じて、西光という法名を与えます。穴の中で衰弱した信西は敵の兵士たちに発見されますが、この時、第2回の清盛との出会いを思い出し、清盛が助けに来たのだと錯覚します。穴から引きずり出された信西は敵に殺される前に自害しますが、この様子を師光が見届けていました。前回までに師光の信西への傾倒が描かれていたので、なかなかよい場面になっていたと思います。
信西の首は都で晒され、帰京した清盛はその様子を見て義朝への怒りの感情を表に出し、義朝との対決に闘志を燃やす、というところで今回は終了です。おそらく、清盛と信西・義朝との関係など、史実と異なる設定がかなり多いのでしょう。とくに、義朝と清盛を宿命の好敵手同士として描いたことにはかなりの無理があると思うのですが、この作品の前半の基調となっており、創作のテレビドラマとしては成功しているように思うので、仕方ないのかな、とは思います。途中から登場の信頼・成親・経宗・惟方なども含めて、朝廷の主要人物はおおむね濃いキャラなので、相変わらず面白いのですが、いかに政変の最大の立役者とはいっても、信頼が経宗に偉そうな口をきいて上座にいたのはどうなのかな、とは思います。
今回は、平治の乱そのものを描くということで、かなり緊張感溢れる展開になるのかと思っていたのですが、正直なところ、期待外れだった感は否めません。清盛と信西の関係が個人的な友情関係を強調したものとなったこともあって、政変という緊迫した状況下での回想場面が緊張感を削ぐことになってしまったことしもあるでしょうか。残念ながら、今回は序盤の伏線があまり効果的ではなかったように思います。次回は、不安な清盛と義朝の一騎討ちが描かれるようですが、なんとか作品を壊さないていどのものになることを願っています。
この記事へのコメント
創作大河ドラマも普通であればヤマ場なのに盛り上がらないですね。
失敗はしてないと思います、が何でしょ?やっぱり役者とかリズムとか流れとかが既に「昔の人」である私にはあわないのでしょうか。
昨日感じたのは、10年前だったら渡辺謙にやって欲しかったなーと。清盛の「激怒」の表現が下手で・・安倍サダヲのがやっぱりうまいんですね~「命からがら」「命がけ」「命知らず」ってのは迫力がないとしらけます。
これがずーっと続くんだな~。
意外ながら汚らしい源義朝の表情が、資料に残る源氏の風体に似ていてナイスな感じです。塚地も絵巻に出てくる貴族にいます、こんな人(笑)
経宗・惟方は拷問のうえ配流ですか・・。どっちでしたか風林火山に出ていた人・・名前が思い出せなくて・・教えてください。(笑)
視聴率・・下がってしまったような気がいたしますが、昨晩は雨で在宅者が流していたことを期待しようではありませんか!まもなくオリンピック被害を受けるのですから。
唯一万能型として将来性を感じるのは見て良しの後白河・・美しー。
主人公の演技は、致命的に下手とまではいかないにしても、全体的には残念な出来になっているように思います。
そういえば、劉さんは信玄役の亀治郎の事を、知らない俳優さんが浮いているっていってましたね。
懐かしい、あの時はあんなに大河に夢中になれたのに…。