『NHK大河ドラマ・ストーリー 平清盛』後編

 前編のあらすじは忠盛の死までで、後編のあらすじは清盛が伊勢平氏の棟梁となってから二条上皇の崩御までとなります。本書の発売は先月29日ですので、第21回「保元の乱」までは、本書が発売された時点ですでに放映されていたことになります。保元の乱の後は平治の乱が次の山場となるのですが、あらすじを読むと、清盛が棟梁としての貫禄を身に着けていく一方で、これまで清盛よりも有能・魅力的に見えた義朝が器の小さい人物になっていき、清盛のほうが魅力的な人物になっていくようです。

 平清盛を主人公とするテレビドラマなので、本来はこのように描かれても不思議ではないのですが、第一部の清盛が主人公としてはあまりにも魅力に欠けていたので、ここ数回清盛は棟梁らしいところを見せているとはいえ、保元の乱後の棟梁らしい清盛像にはたして説得力があるのか、やや不安にはなります。清盛を第一部にて、未熟なところがありつつも、有能で魅力的である、ともっと強調して描いておけばよかったのではないか、と改めて思います。この不安が杞憂に終わればよいのですが。

 保元の乱後は、清盛と義朝との関係が中心になって描かれ、義朝がせめて清盛と同等の官位をくださるように、と信西に願い出る場面も描かれるようです。保元の乱直前の時点で、清盛と義朝には官位に大きな差があり、都での政治的地位はとても対等とは言えなかった、というのはこの時代に関心のある人にとってすでによく知られている史実なのですが、この作品では基本的に、伝統的な源平対等史観に沿って、義朝を清盛と対等の好敵手として描く方針が貫かれているようです。娯楽映像作品としては有かな、とも思うのですが、せっかく第一線の研究者を二人も時代考証に起用しているのですから、残念ではあります。

 また、清盛は保元の乱の時も直前まで中立的立場にありましたが、平治の乱でも同様だったと思われ、信西だけではなく信頼とも姻戚関係にありました。しかしこの作品では、保元の乱後の清盛は信西と政治的盟友とも言えそうな関係を築いていくことになります。制作発表の時点では、「最新の研究を通じて、悪役とイメージされている清盛を全く違う角度から描いていきます」とのチーフプロデューサーの発言があったので、この点でも近年の研究成果が取り入れられるのかな、と期待していただけに、やや残念ではあります。もっとも、娯楽映像作品ですから、じゅうらいの通説にのっとって面白くなれば、それでよいのかな、とは思います。上述したように、後編のあらすじは清盛が伊勢平氏の棟梁となってから二条上皇の崩御までで、第23回以降の予定は以下のようになります。

第23回「叔父を斬る」
第24回「清盛の大一番」
第25回「見果てぬ夢」
第26回「平治の乱」
第27回「宿命の対決」
第28回「友の子、父の妻」
第29回「滋子の婚礼」
第30回「平家納経」
第31回「伊豆の流人と京の巨人」

 第27回「宿命の対決」では、保元の乱での清盛と忠正の一騎討ちと同様の、清盛と義朝との一騎討ちが描かれそうで、とても私の好みには合わなさそうなので、なんとも残念です。まあ要するに、とてもあり得そうにない状況ということなのですが、娯楽映像作品としてさほど問題のないものになっていればよいかな、とも思います。第30回では崇徳院の怨念が描かれますが、この作品では、崇徳院がたいへん深い怨みを残して崩御した、という俗説が採用されるようで、第32回以降も、崇徳院の怨霊が語られることになるのかもしれません。

 第22回「勝利の代償」まではすでに放送されていますが、第22回にて頼長と忠実が退場となります。その後、第23回で忠正と為義が、第25回で由良が、第26回で信西が、第28回で義朝が、第29回で家貞と得子(美福門院)が、第30回で忠通と崇徳院が、第31回で池禅尼(宗子)が退場となります。こうして、第一部の主要人物の多くが退場することになりますので、第32回以降はかなり不安なのですが、清盛も棟梁らしくなるようなので、話自体は楽しめそうです。また、未発表の配役も気になるところで、清盛と時子の間の子供の成人役や義経役や高倉帝役に注目しています。

この記事へのコメント

みら
2012年06月07日 18:38
こんにちわ

なんだか劉さんの憂いと諦め苛立ちが感じられるコメントで・・(笑)
このドラマは従来説が多く新説が採用されていないという事ですか?
(私はあまり詳しくないのでその違いもよくわかりませんが)それでも、一騎打ちにした方がわかりやすくて受け入れられるという安直な方向に流れているのはやはり視聴率の低下の回復をそこに求めているからでしょうか。

『独眼竜』あたりと比較してしまうと、どうにも苛立ちが強くなってしまいそうな近年の大河ドラマですが、来年あたりは本当に興味がわかなくなりそうで怖いです(笑)

未熟な棟梁ではなく、マツケン君の演技力が未熟なのか?と、最近疑ってます(笑)
2012年06月07日 23:59
清盛に魅力がないのは脚本・演出の問題だと思っていたのですが、最近では、演技力の問題でもあるのかな、と思うようになりました。

保元の乱後の清盛は脚本上は棟梁らしくなりそうなので、演じる側の真価が問われると思います。

この記事へのトラックバック