28000年前までさかのぼるオーストラリアの岩石画

 オーストラリア北部のアーネムランド(Arnhem Land)にある巨大岩窟住居Narwala Gabarnmangで1年前に発見されたロックアート(岩石画)の破片の年代が、放射性炭素年代測定により28000年前と分かった、と報道されました。破片には木炭で絵が描かれていたことから、放射性炭素年代測定により年代を推定できた、とのことです。ただ、この報道を読んだかぎりでは、この年代が較正年代なのか否か、分かりませんでした。破片が見つかったNarwala Gabarnmangは、天井や柱状の岩の表面が岩石画で覆われているそうです。

 破片を発見し、最初に調査した南クイーンズランド大学のブライス=バーカー(Bryce Barker)教授によると、破片は岩石画が描かれてからそれほど時間を経ずに天井から剥がれ落ち、土に埋もれたために保存されたのではないか、とのことです。またバーカー教授は、これまでに発掘したのはNarwala Gabarnmangのほんの一部にすぎず、オーストラリアに人類が移住したのが45000年前までさかのぼることを考えると、28000年前よりも古い岩石画もきっとあるだろう、と述べています。

 じゅうらい、芸術が上部旧石器時代のヨーロッパで開花したことを強調し、これを創造の爆発と考え、石器制作技術の変化なども含めてヨーロッパにおける上部旧石器時代の始まりを人類史の一大転機する見解が有力でしたが、これにはヨーロッパ中心主義的なところが多分にあったように思います。ヨーロッパにおける旧石器時代の遺物の発掘・研究は他の地域よりも進んでいるので、このような見解が主張されるのは仕方のないところもありましたが、このオーストラリアの岩石画のように、今後他地域での発掘・研究が進めば、他地域と比較してのヨーロッパの上部旧石器時代の画期性は相対的に低下していくのではないか、と思います。

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