大河ドラマ『平清盛』第23回「叔父を斬る」
今回は、清盛と義朝がともに肉親を斬首するという苦渋の決断をくだすことになり、これまでのように伊勢平氏と河内源氏との対比という構図で話が展開しました。信西は、清盛には叔父の忠正を、義朝には父の為義を斬首するよう言い渡します。清盛と義朝は信西に助命を乞いますが、信西はまったく聞き入れようとしません。そこで清盛は、池禅尼(宗子)の従兄弟の子で後白河帝の側近である藤原成親に取り成しを頼むのですが、成親は表面的には清盛に同情するものの、内心では清盛にまったく同情していないようです。
この件に限らず、初登場の頃より、成親は父の家成とは異なり、清盛に冷淡なところがあります。この作品では清盛の烏帽子親だった家成にたいして、成親は清盛との直接的なつながりがまだそれほど深くはないという設定もあるのでしょうが(次回、清盛の長男の重盛と、成親の妹の経子が結婚するようです)、両者の関係の結末から逆算して、当初より成親は清盛に冷淡な態度をとっていた、という構図にしているようにも思われます。この解釈が成功するのか否か、成親の最期まで見てみないと分かりませんが、現時点では、冷ややかで陰険な策謀家としての成親の人物像を印象づける効果になっていて、少なくとも失敗ではないように思います。
いよいよ忠正と為義が斬首される日を迎え、清盛は躊躇いつつも忠正を斬首したのにたいして、義朝はすっかり狼狽してしまって為義を斬れず、家人の鎌田正清が為義を斬首し、父の最後の頼みもきけないのか、と義朝は弟たちに罵倒されてしまいます。これまで、主人公の清盛よりも義朝のほうが有能・魅力的であるように描かれてきたのですが、次回以降、清盛が棟梁としての貫禄を身に着けていく一方で、義朝が器の小さい人物になっていき、清盛のほうが魅力的な人物になっていくようです。平治の乱での義朝の敗亡と清盛の勝利を描くために、物語上いずれはそのように両者の描写を逆転させる必要があったのでしょうが、この斬首がその契機となるようです。
義朝と為義は保元の乱の直前にはほとんど絶交状態だったかもしれませんが、義朝を頼って降伏した(この作品ではそのような設定にはなっていませんが)ことから推測すると、両者の間に埋めがたい決定的な溝があったわけではなく、親子の情がまだ残っていたのかもしれません。一般的にも、叔父と従兄弟よりも父を斬首するほうが心理的抵抗は大きいでしょうから、清盛が躊躇いつつも叔父を斬首したのにたいして、義朝は父を斬首できなかったとする対比と、これを契機とする清盛と義朝の逆転という構図は、悪くはないと思います。まあ、清盛や義朝が直接斬首したのか、という突っ込みはあるでしょうが。
おそらく、清盛にとって叔父の忠正の斬首こそ、伊勢平氏一門の棟梁として相応しい人物になるための最後の関門という構図なのでしょう。それ故に、おそらく史実では清盛と疎遠だったであろう忠正が、初回から物語上で重要な役割を果たしてきたのでしょう。清盛の存在が伊勢平氏一門にとって禍になるのではないか、と懸念して清盛にきつく接し続けてきた忠正が、自分の存在こそ伊勢平氏一門の禍になるかもしれないという状況になり、いさぎよく斬首を受け入れたという設定は、なかなかよかったように思います。おそらく、忠正の描写は史実とはかなり異なるでしょうが、最後の斬首の場面がややくどかったとはいえ、この作品の創作はまずまず成功したのではないか、と思います。また、清盛の正妻の時子も、保元の乱を機に変わってくるようです。
武士が戦で力を見せても何も変わらない、と苦い想いの清盛ですが、頼長を死に追い込んだことなど同じく重荷を背負った(作中の清盛はこのことにあまり気づいていないかもしれませんが)信西の決意を聞き、世を変えるためには信西と組んでその力を利用することが必要だ、と考えます。史実では、清盛と信西との関係はそれほど緊密ではなかったようですが、この作品では、序盤から信西と清盛との関係を描いており、両者はそれほど親密ではないものの、清盛にとって信西は道標になり得る存在であることが何度か描かれていました。それだけに、叔父の斬首という重荷を背負った清盛が、伊勢平氏一門の棟梁として覚悟を決め、信西と組むことを決意した、という設定は悪くなかったように思います。
その信西に心酔している藤原師光(西光)は、冷徹な切れ者といった感じで、配役が判明した時点で期待していましたが、期待通りたいへんよいと思います。為義の斬首の場面を鬼若(後の弁慶)が覗いていましたが、どうもこの鬼若の役割がよく分かりません。今後、義経と関わってくるための伏線なのでしょうが、現時点では鬼若の意図の推測は難しいところがあります。西行もわずかながら登場しましたが、どうも出家後は存在感に欠けます。平家納経の回では活躍しそうですから、今後も何度か見せ場ありそうですが。次回もまだ第二部という位置づけなのでしょうが、今回は物語上大きな転機となりそうで、ちょうど物語が半分近くに差し掛かったということもありますし、前半の総決算となった回でもあるように思います。ややくどかったところもありますし、清盛が信西を殴る場面など、無理なところもありましたが、今回もなかなか面白く、後半の初回となるだろう次回も楽しみです。
この件に限らず、初登場の頃より、成親は父の家成とは異なり、清盛に冷淡なところがあります。この作品では清盛の烏帽子親だった家成にたいして、成親は清盛との直接的なつながりがまだそれほど深くはないという設定もあるのでしょうが(次回、清盛の長男の重盛と、成親の妹の経子が結婚するようです)、両者の関係の結末から逆算して、当初より成親は清盛に冷淡な態度をとっていた、という構図にしているようにも思われます。この解釈が成功するのか否か、成親の最期まで見てみないと分かりませんが、現時点では、冷ややかで陰険な策謀家としての成親の人物像を印象づける効果になっていて、少なくとも失敗ではないように思います。
いよいよ忠正と為義が斬首される日を迎え、清盛は躊躇いつつも忠正を斬首したのにたいして、義朝はすっかり狼狽してしまって為義を斬れず、家人の鎌田正清が為義を斬首し、父の最後の頼みもきけないのか、と義朝は弟たちに罵倒されてしまいます。これまで、主人公の清盛よりも義朝のほうが有能・魅力的であるように描かれてきたのですが、次回以降、清盛が棟梁としての貫禄を身に着けていく一方で、義朝が器の小さい人物になっていき、清盛のほうが魅力的な人物になっていくようです。平治の乱での義朝の敗亡と清盛の勝利を描くために、物語上いずれはそのように両者の描写を逆転させる必要があったのでしょうが、この斬首がその契機となるようです。
義朝と為義は保元の乱の直前にはほとんど絶交状態だったかもしれませんが、義朝を頼って降伏した(この作品ではそのような設定にはなっていませんが)ことから推測すると、両者の間に埋めがたい決定的な溝があったわけではなく、親子の情がまだ残っていたのかもしれません。一般的にも、叔父と従兄弟よりも父を斬首するほうが心理的抵抗は大きいでしょうから、清盛が躊躇いつつも叔父を斬首したのにたいして、義朝は父を斬首できなかったとする対比と、これを契機とする清盛と義朝の逆転という構図は、悪くはないと思います。まあ、清盛や義朝が直接斬首したのか、という突っ込みはあるでしょうが。
おそらく、清盛にとって叔父の忠正の斬首こそ、伊勢平氏一門の棟梁として相応しい人物になるための最後の関門という構図なのでしょう。それ故に、おそらく史実では清盛と疎遠だったであろう忠正が、初回から物語上で重要な役割を果たしてきたのでしょう。清盛の存在が伊勢平氏一門にとって禍になるのではないか、と懸念して清盛にきつく接し続けてきた忠正が、自分の存在こそ伊勢平氏一門の禍になるかもしれないという状況になり、いさぎよく斬首を受け入れたという設定は、なかなかよかったように思います。おそらく、忠正の描写は史実とはかなり異なるでしょうが、最後の斬首の場面がややくどかったとはいえ、この作品の創作はまずまず成功したのではないか、と思います。また、清盛の正妻の時子も、保元の乱を機に変わってくるようです。
武士が戦で力を見せても何も変わらない、と苦い想いの清盛ですが、頼長を死に追い込んだことなど同じく重荷を背負った(作中の清盛はこのことにあまり気づいていないかもしれませんが)信西の決意を聞き、世を変えるためには信西と組んでその力を利用することが必要だ、と考えます。史実では、清盛と信西との関係はそれほど緊密ではなかったようですが、この作品では、序盤から信西と清盛との関係を描いており、両者はそれほど親密ではないものの、清盛にとって信西は道標になり得る存在であることが何度か描かれていました。それだけに、叔父の斬首という重荷を背負った清盛が、伊勢平氏一門の棟梁として覚悟を決め、信西と組むことを決意した、という設定は悪くなかったように思います。
その信西に心酔している藤原師光(西光)は、冷徹な切れ者といった感じで、配役が判明した時点で期待していましたが、期待通りたいへんよいと思います。為義の斬首の場面を鬼若(後の弁慶)が覗いていましたが、どうもこの鬼若の役割がよく分かりません。今後、義経と関わってくるための伏線なのでしょうが、現時点では鬼若の意図の推測は難しいところがあります。西行もわずかながら登場しましたが、どうも出家後は存在感に欠けます。平家納経の回では活躍しそうですから、今後も何度か見せ場ありそうですが。次回もまだ第二部という位置づけなのでしょうが、今回は物語上大きな転機となりそうで、ちょうど物語が半分近くに差し掛かったということもありますし、前半の総決算となった回でもあるように思います。ややくどかったところもありますし、清盛が信西を殴る場面など、無理なところもありましたが、今回もなかなか面白く、後半の初回となるだろう次回も楽しみです。
この記事へのコメント
たしかに今回の斬首シーンはくどかったですね、でもつまらないと思わなかったのは脚本の力なんでしょうか、どう転ぶのかわからず目が離せなかったので。
本文中の→「清盛や義朝が直接斬首したのか、という突っ込みはあるでしょうが。」の記載がなければ、ココは突っ込んでしまうところでした(笑)
しかし信西・・ムカつくわ~許せないと思っていたらひっぱたかれたんで少しスッキリしました(笑)
悪左府よりあくどい・・しかも清盛(平家の武力)を世直しに引きずりこんでいるように私にはみーえーるー。
弁慶は・・チラリズム?(笑)御用聞きのように「お役にたてますから使ってね」的に登場させているんじゃないですか?
いつも思うのが、どうして戦争の大義って「世直し」なんですかね?
こんな古い時代から現代までこれかよ?って感じです。
分相応の平和主義っていないのか?というより、父親の首をきるくらいなら、摂関家と王家を皆殺しにする道を、私なら選ぶんだけどな(笑)もちろん、呉越同舟的に源平間で和平条約を結んでからですが。
この作品は、ベテラン勢が寂しいところはあります。今はまだ家貞がいますが、家貞も平治の乱後すぐ退場となりますし、前半の主要人物の多くが退場する平治の乱後にはやはり不安があります。