インド北部の後期アシューリアン

 インド北部の後期アシューリアン(アシュール文化)についての研究(Haslam et al., 2011)の要約を読みました。この研究では北部中央インドのマドーヤプラデシ州のミドルサン盆地にある、後期更新世のBamburi 1およびPatpara遺跡が取り上げられています。この二つの遺跡は、単一結晶粒光ルミネッセンス年代により、14~12万年前と推定されました。このことから、この二つの遺跡の年代は、海洋酸素同位体ステージ6~5の移行期に相当するのではないか、と指摘されています。

 この二つの遺跡で発見された石器のなかには、後期アシューリアンが含まれていました。後期アシューリアンの担い手は非現生人類である、とこの研究では指摘されていますが、石器の形式・製作技術と人類種との関係を固定的に把握するのには慎重であらねばならないだろう、と思います。したがって、現生人類の拡散について、現時点ではこの二つの遺跡から確たることを推測するのは難しいだろう、とも思います。とはいえ、アシューリアンとしては世界的にも最末期となりそうですから、たいへん貴重な遺跡であることは間違いないでしょう。


参考文献:
Haslam M. et al.(2011): Late Acheulean hominins at the Marine Isotope Stage 6/5e transition in north-central India. Quaternary Research, 75, 3, 670-682.
http://dx.doi.org/10.1016/j.yqres.2011.02.001

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