さかのぼる火の使用の起源

 アフリカ南部における100万年前頃の確実な火の使用についての研究(Berna et al., 2012)が報道されました。この研究はオンライン版での先行公開となります。この研究については河合信和氏のブログに解説があり、私の方からは付け加えるべきことはとくにないのですが、簡潔にまとめておきます。この研究で調査されたのは、南アフリカの北西にある北ケープ州のワンダーウェーク洞窟の地層で、植物の灰・焼けた骨片・加熱された石器断片などが発見され、洞窟内に広く分布していることから、野火などではなく人為的と判断された、とのことです。

 河合氏の解説にて指摘されていますが、人類による火の使用については、150万年前頃までさかのぼるとの主張もありますが、確実に人為的かというと、疑問視されているようです。そのため、ワンダーウェーク洞窟の100万年前頃の人類による火の使用例は、確実に人為的な火の使用としては最古の事例になりそうです。もっとも、今後人類による火の使用の起源はさらにさかのぼる可能性が高そうではあります。ワンダーウェーク洞窟で火を使用していた人類について、河合氏の解説ではホモ=エレクトスで確実だろう、と指摘されていますが、確かに、広義のエレクトスである可能性はきわめて高いと言えそうです。


参考文献:
Berna F. et al.(2012): Microstratigraphic evidence of in situ fire in the Acheulean strata of Wonderwerk Cave, Northern Cape province, South Africa. PNAS, 109, 20, E1215–E1220.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1117620109

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