2012年度米国自然人類学会総会

 今年の4月11日~4月14日にかけて、アメリカ合衆国オレゴン州ポートランド市で第81回米国自然人類学会総会が開催されました。米国自然人類学会総会では、最新の研究成果が多数報告されるだけに、古人類学に関心のある私は大いに注目しています。総会での報告の概要も公表されているのですが、どのような報告がなされたのか、まだ詳しく把握できていません。
http://www.bonesandbehavior.org/aapa2012/

 ざっと目を通して注目した報告は二つあります。一つは、Okladnikov洞窟の南西70kmにあるChagyrskaya洞窟で新たに発見されたネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の特徴を持つ人骨についての報告(Viola et al., P293-294)です。年代は未確定ですが、海洋酸素同位体ステージ3の可能性が高そうとのことで、中部旧石器時代~上部旧石器時代の移行期と重なってきそうという意味でも、注目されます。Chagyrskaya洞窟の石器はムステリアンで、Okladnikov洞窟のそれと類似している、とのことです。

 もう一つは、LB1の下顎骨を化石人類や小頭症患者とクレチン病患者も含む現代人のそれとを比較し、LB1は小頭症やクレチン病の現生人類(ホモ=サピエンス)ではない、と結論づけた報告(Viterbo et al., P294)です。この報告によると、LB1が現生人類の健常者に分類される可能性は1%あるものの、病変の現生人類に分類される可能性0%とのことです。LB1を含む更新世後期のフローレス島の人骨群は病変の現生人類である、と主張する研究者もまだいますが、新種説の優位は今後も揺るがないだろう、と思います。他の報告も、できるかぎり読んでいこう、と考えています。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック