ロナルド=H=フリッツェ著、尾澤和幸訳『捏造される歴史』
原書房より2012年2月に刊行されました。本書では、さまざまな擬似歴史について、その主張の変遷・背景・影響力・間違っている点などが、ひじょうに詳しく述べられており、いわば擬似歴史の研究史・史学史(と言うと語弊がありそうですが)になっています。こうした擬似歴史のなかには、私にとって馴染み深いものもありましたが、地域としてはおもにアメリカ合衆国が対象となっているので、私のよく知らないものもありました。こうした擬似歴史は、そもそも政治的意図から捏造されることも少なからずあるため、政治的に影響を及ぼすこともあり、お手軽な娯楽として消費されているだけだから、といって見過ごすことのできない問題に発展することもあります。その意味で、本書のような擬似歴史批判書は必要であり有益でもある、と思います。
本書では、各章ごとに個別の擬似歴史について扱われており、第一章ではアトランティス、第二章ではアメリカ大陸への人類の移住、第三章・第四章では天地創造説と人種差別、第五章では超古代文明、第六章では『黒いアテナ』論争が取り上げられています。本書でも述べられていますが、もちろん、これらは個別に主張されているのではなく、相互に関係していることが多く、たとえばアトランティスと超古代文明とはかなり重なるところがあります。こうした擬似歴史は今でも生み出されており、近年の事例として、鄭和の艦隊によるアメリカ大陸到達という主張も取り上げられています。当然のことながら、本書ではこの主張が擬似歴史として一蹴されているのですが、この主張が広く受け入れられた背景に、本書では触れられていない、近年における経済・軍事力の発展に伴う中華人民共和国の影響力の拡大があるのではないか、と思います。
本書では、各章ごとに個別の擬似歴史について扱われており、第一章ではアトランティス、第二章ではアメリカ大陸への人類の移住、第三章・第四章では天地創造説と人種差別、第五章では超古代文明、第六章では『黒いアテナ』論争が取り上げられています。本書でも述べられていますが、もちろん、これらは個別に主張されているのではなく、相互に関係していることが多く、たとえばアトランティスと超古代文明とはかなり重なるところがあります。こうした擬似歴史は今でも生み出されており、近年の事例として、鄭和の艦隊によるアメリカ大陸到達という主張も取り上げられています。当然のことながら、本書ではこの主張が擬似歴史として一蹴されているのですが、この主張が広く受け入れられた背景に、本書では触れられていない、近年における経済・軍事力の発展に伴う中華人民共和国の影響力の拡大があるのではないか、と思います。
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