ネアンデルタール人の狩猟と認知能力
ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の狩猟の様相と認知能力についての研究(Rendu et al., 2011)の要約を読みました。この研究ではまず、西ヨーロッパの多くのムステリアン遺跡(その担い手はネアンデルタール人とされています)は、特定の分類群によって占められている動物相の集合を示しているものの、動物相単独では、ネアンデルタール人の狩猟戦略を議論するのにじゅうぶんではない、と指摘されます。そこでこの研究では、フランス南西部の後期更新世の二つのムステリアン遺跡(マウランとレスプラデレス)の動物骨が、獲物となる動物の選択や骨から得られる具体的な利用法から分析され、ネアンデルタール人の狩猟の様相と認知能力について推定されています。
その結果、この二つのムステリアン遺跡には、獲物となった動物の多さや選択性や季節性など、共同狩猟で認識される特性が認められました。このことからネアンデルタール人は、将来に備えて余剰物を備蓄する意図を有し、獲物となる動物を計画的に狩猟していたと考えられ、そのために必要な技術・認知能力を有していただろう、とこの研究では推測されています。現生人類(ホモ=サピエンス)アフリカ単一起源説が優勢になって以降、ネアンデルタール人と現生人類との違いを強調する見解が主流になり、それはとくに計画性などに代表される認知能力において顕著だ、主張されてきました。
しかし、この研究もそうですが、近年ではネアンデルタール人にも現生人類特有とされてきた計画性などの認知能力を認める見解が支持を得つつあるように思われ、「ネアンデルタール人復権」の動向が強くなってきているようです。ただ、ネアンデルタール人と現生人類との認知能力にどのていどの共通性と相違があるのかというと、まだ不明なところがあると思います。また、こうした問題では現生人類に可能でネアンデルタール人に不可能なことは何か、という観点で議論が進められることが多いのですが、その逆の可能性についても、念頭に置いておく必要があるだろう、とは思います。
参考文献:
Rendu W. et al.(2012): Monospecific faunal spectra in Mousterian contexts: Implications for social behavior. Quaternary International, 247, 50–58.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quaint.2011.01.022
その結果、この二つのムステリアン遺跡には、獲物となった動物の多さや選択性や季節性など、共同狩猟で認識される特性が認められました。このことからネアンデルタール人は、将来に備えて余剰物を備蓄する意図を有し、獲物となる動物を計画的に狩猟していたと考えられ、そのために必要な技術・認知能力を有していただろう、とこの研究では推測されています。現生人類(ホモ=サピエンス)アフリカ単一起源説が優勢になって以降、ネアンデルタール人と現生人類との違いを強調する見解が主流になり、それはとくに計画性などに代表される認知能力において顕著だ、主張されてきました。
しかし、この研究もそうですが、近年ではネアンデルタール人にも現生人類特有とされてきた計画性などの認知能力を認める見解が支持を得つつあるように思われ、「ネアンデルタール人復権」の動向が強くなってきているようです。ただ、ネアンデルタール人と現生人類との認知能力にどのていどの共通性と相違があるのかというと、まだ不明なところがあると思います。また、こうした問題では現生人類に可能でネアンデルタール人に不可能なことは何か、という観点で議論が進められることが多いのですが、その逆の可能性についても、念頭に置いておく必要があるだろう、とは思います。
参考文献:
Rendu W. et al.(2012): Monospecific faunal spectra in Mousterian contexts: Implications for social behavior. Quaternary International, 247, 50–58.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quaint.2011.01.022
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