スペシャルドラマ『坂の上の雲』第10回「旅順総攻撃」
いよいよ完結編となる第3部が始まりました。今回は旅順要塞をめぐる攻防が中心に描かれ、相変わらず、豪華な配役による見ごたえのある演技と、ロケを多用した映像美には感嘆していますが、一方で、この作品の問題点を改めて認識させられる内容でもありました。それは、完結後にこのブログに掲載する予定の全体的な感想で述べようと考えていたことなのですが、この作品には大河ドラマの総集編的性格が見られる、ということです。
大河ドラマの総集編は、本編のかなり部分を切り落としていかねばならないため、総集編だけを見ていると、全体の話のつながりが弱く、断片的な話の集合になりがちで、全体的な流れをつかみにくくなります。この作品にもそうしたところが多分に見られ、全体的な話のつながりが弱くなっています。おそらく、この作品の視聴率が低迷している(少なくとも、NHKが期待していた数字よりはずっと低いでしょう)のは、現代日本人の間に「戦後民主主義」や「お花畑平和主義」がすっかり浸透してしまっているから、などという「国士様」観点の理由(だからといって、「国士様」がこの作品を高く評価しているとも思えませんが)ではなく、断片的な話の集合になっているところがあり、一つの物語として見ると、やや焦点がボケてしまっているからではないのか、と私は考えています。
これは、今年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』と同じく、時間配分の失敗のためではないか、と思います。この作品は、1年ごとに1部ずつ計13回放送され、通常の大河ドラマに換算すると、26回分となります。正直なところ、少なくとも通常の大河ドラマの1年分(約50回)は欲しかったところですが、予算の都合でそれは無理なのだとしたら、実質的には第9回から描き始めた日露戦争を、せめて第6回あたりから描けなかったものだろうか、と思います。そうすれば、今回は省略された黄海海戦にしても、やや詳しく描けていたのではないか、と思います。この作品は日本海海戦を物語の頂点に持ってくる構成のようなので、その前提としての黄海海戦を省略したのは失敗だったように思います。
もちろん、大部の原作の映像化にあたって、原作のすべてを消化することは無理なので、省略しなければいけないところが多々あるのは仕方のないところです。その意味で、主人公3人体制とはいっても、実質的には秋山真之が単独主人公なのですから、真之を中心に物語を構成していき、乃木と児玉源太郎との関係など、真之や海軍に直接関わりのない描写を思い切って省略し、逆に省略された真之関係の話を描いていけばよかったのではないか、とも思います。
たとえば、語りでも触れられなかった日本の戦艦2隻の撃沈(その前提として、マカロフ提督の戦死があります)は、原作では、当時の日本海軍の戦艦6隻中2隻が短期間で失われるという非常事態に、真之も含めて多くの軍人が動揺するなか、泰然自若とした東郷平八郎を見て、真之が東郷に心服する、という物語の構造上重要な役割を果たした出来事だけに、省略は残念でした。もっとも、この作品では日露戦争前より真之が東郷に心服しており、そうした場面を省略したうえで物語を破綻させないようにしよう、との工夫と言えるかもしれません。
この他にも、おそらくは省略されるであろう黒溝台会戦(原作でもっとも印象に残った描写でした)など、省略せずに描いて欲しい話は多々ありますが、第8回までの話もそれぞれに面白く、省略するには惜しいというものがほとんどだったので、私の要求は製作者側の負担を無視した夢想と言うべきなのかもしれません。以上、色々と不満点を述べてきましたが、それだけ、この作品への期待が大きい、ということでもあります。全体的な話のつながりの弱さはありますが、もちろん、個々の場面の完成度は高く、優れた作品であるのは間違いない、と考えています。
大河ドラマの総集編は、本編のかなり部分を切り落としていかねばならないため、総集編だけを見ていると、全体の話のつながりが弱く、断片的な話の集合になりがちで、全体的な流れをつかみにくくなります。この作品にもそうしたところが多分に見られ、全体的な話のつながりが弱くなっています。おそらく、この作品の視聴率が低迷している(少なくとも、NHKが期待していた数字よりはずっと低いでしょう)のは、現代日本人の間に「戦後民主主義」や「お花畑平和主義」がすっかり浸透してしまっているから、などという「国士様」観点の理由(だからといって、「国士様」がこの作品を高く評価しているとも思えませんが)ではなく、断片的な話の集合になっているところがあり、一つの物語として見ると、やや焦点がボケてしまっているからではないのか、と私は考えています。
これは、今年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』と同じく、時間配分の失敗のためではないか、と思います。この作品は、1年ごとに1部ずつ計13回放送され、通常の大河ドラマに換算すると、26回分となります。正直なところ、少なくとも通常の大河ドラマの1年分(約50回)は欲しかったところですが、予算の都合でそれは無理なのだとしたら、実質的には第9回から描き始めた日露戦争を、せめて第6回あたりから描けなかったものだろうか、と思います。そうすれば、今回は省略された黄海海戦にしても、やや詳しく描けていたのではないか、と思います。この作品は日本海海戦を物語の頂点に持ってくる構成のようなので、その前提としての黄海海戦を省略したのは失敗だったように思います。
もちろん、大部の原作の映像化にあたって、原作のすべてを消化することは無理なので、省略しなければいけないところが多々あるのは仕方のないところです。その意味で、主人公3人体制とはいっても、実質的には秋山真之が単独主人公なのですから、真之を中心に物語を構成していき、乃木と児玉源太郎との関係など、真之や海軍に直接関わりのない描写を思い切って省略し、逆に省略された真之関係の話を描いていけばよかったのではないか、とも思います。
たとえば、語りでも触れられなかった日本の戦艦2隻の撃沈(その前提として、マカロフ提督の戦死があります)は、原作では、当時の日本海軍の戦艦6隻中2隻が短期間で失われるという非常事態に、真之も含めて多くの軍人が動揺するなか、泰然自若とした東郷平八郎を見て、真之が東郷に心服する、という物語の構造上重要な役割を果たした出来事だけに、省略は残念でした。もっとも、この作品では日露戦争前より真之が東郷に心服しており、そうした場面を省略したうえで物語を破綻させないようにしよう、との工夫と言えるかもしれません。
この他にも、おそらくは省略されるであろう黒溝台会戦(原作でもっとも印象に残った描写でした)など、省略せずに描いて欲しい話は多々ありますが、第8回までの話もそれぞれに面白く、省略するには惜しいというものがほとんどだったので、私の要求は製作者側の負担を無視した夢想と言うべきなのかもしれません。以上、色々と不満点を述べてきましたが、それだけ、この作品への期待が大きい、ということでもあります。全体的な話のつながりの弱さはありますが、もちろん、個々の場面の完成度は高く、優れた作品であるのは間違いない、と考えています。
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