ヨーロッパ最古の現生人類?
既知の人骨を再検証した結果、ヨーロッパ最古の現生人類(ホモ=サピエンス)と考えられる、と主張した研究(Higham et al., 2011)が報道されました。この研究は、オンライン版での先行公開となります。この研究で再検証されたのは、イギリスのケンツ洞窟で発掘された人類の上顎骨(KC4)です。KC4は1927年に発掘され、上部旧石器時代の現生人類に分類されました。またKC4は1989年に、AMS法による直接的な放射性炭素年代測定により、暦年代で36400~34700年前とされました。
この研究では、新たに限外濾過装置が用いられ、骨のコラーゲンが再度解析された結果、KC4は暦年代で44200~41500年前と推定されました。同様に年代測定された現生人類人骨としては最古となり、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)がヨーロッパで生存していた年代と重なります。またこの研究では、KC4の歯の特徴のうち、13個はネアンデルタール人よりも現生人類のものと、3個はネアンデルタール人との類似性を示しており、ヨーロッパ北西部の現生人類人骨としては最古になる、と主張されています。
これまで、ヨーロッパで43000~42000年前頃に出現したオーリナシアン(オーリニャック文化)は現生人類の所産とされていましたが、直接的に年代測定されたヨーロッパの現生人類人骨は稀で、暦年代では41000~39000年前頃よりもさかのぼりません。この研究では、KC4の再検証の意義を、ヨーロッパで最初のオーリナシアンと最初の現生人類人骨との年代の間隙を埋め、40000年以上前のヨーロッパにおいて、初期現生人類による広範な地域での急速な拡散を示したことにある、と指摘されています。
ひじょうに興味深い研究ですが、ヨーロッパにおける中部旧石器時代~上部旧石器時代の人類史をより詳しく復元するには、ネアンデルタール人も含む他の人骨の年代測定を積み重ねていく必要があるでしょう。ただ、試料汚染などの問題も含む年代測定の難しさもあるので、さまざまな年代測定法を用いて、遺跡の動物骨などから間接的に人類の年代を推定する必要があるだろう、とは思います。現生人類のヨーロッパでの拡散が急速だとしたら、ネアンデルタール人の絶滅との関係と結びつけたくなりますが、現時点では、まだ確たることは言えないと思います。
参考文献:
Higham T. et al.(2011): The earliest evidence for anatomically modern humans in northwestern Europe. Nature, 479, 7374, 521–524.
https://doi.org/10.1038/nature10484
この研究では、新たに限外濾過装置が用いられ、骨のコラーゲンが再度解析された結果、KC4は暦年代で44200~41500年前と推定されました。同様に年代測定された現生人類人骨としては最古となり、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)がヨーロッパで生存していた年代と重なります。またこの研究では、KC4の歯の特徴のうち、13個はネアンデルタール人よりも現生人類のものと、3個はネアンデルタール人との類似性を示しており、ヨーロッパ北西部の現生人類人骨としては最古になる、と主張されています。
これまで、ヨーロッパで43000~42000年前頃に出現したオーリナシアン(オーリニャック文化)は現生人類の所産とされていましたが、直接的に年代測定されたヨーロッパの現生人類人骨は稀で、暦年代では41000~39000年前頃よりもさかのぼりません。この研究では、KC4の再検証の意義を、ヨーロッパで最初のオーリナシアンと最初の現生人類人骨との年代の間隙を埋め、40000年以上前のヨーロッパにおいて、初期現生人類による広範な地域での急速な拡散を示したことにある、と指摘されています。
ひじょうに興味深い研究ですが、ヨーロッパにおける中部旧石器時代~上部旧石器時代の人類史をより詳しく復元するには、ネアンデルタール人も含む他の人骨の年代測定を積み重ねていく必要があるでしょう。ただ、試料汚染などの問題も含む年代測定の難しさもあるので、さまざまな年代測定法を用いて、遺跡の動物骨などから間接的に人類の年代を推定する必要があるだろう、とは思います。現生人類のヨーロッパでの拡散が急速だとしたら、ネアンデルタール人の絶滅との関係と結びつけたくなりますが、現時点では、まだ確たることは言えないと思います。
参考文献:
Higham T. et al.(2011): The earliest evidence for anatomically modern humans in northwestern Europe. Nature, 479, 7374, 521–524.
https://doi.org/10.1038/nature10484
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