岩明均『ヒストリエ』第7巻発売(講談社)
待望の第7巻が刊行されました。第3巻までの内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200707article_28.html
第4巻の内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_18.html
第5巻の内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200904article_10.html
第6巻の内容は以下の記事にて述べています。
https://sicambre.seesaa.net/article/201005article_25.html
第6巻にて、アレクサンドロスとヘファイスティオンが同一人物というか、アレクサンドロスの別人格がヘファイスティオンだと示されました。エウメネスの上司であるディオドトスによると、ヘファイスティオンの人格が表に出ている時はアレクサンドロスの人格は眠っているのにたいして、アレクサンドロスの人格が表に出ている時(ほとんどはこちらの方なのですが)は、ヘファイスティオンには「意識」があり、そのために、アレクサンドロスはヘファイスティオンの人格が表に出ている時の行動を知らないのですが、ヘファイスティオンはアレクサンドロスの人格が表に出ている時の行動を把握しています。アレクサンドロスの人格の愛馬ブーケファラスは、ヘファイスティオンの人格には懐かず暴れ、ヘファイスティオンは、ブーケファラスが落ち着かないようなら、アレクサンドロスを「起こそう」と考えます。ヘファイスティオンの方は、人格の交代をかなりの程度「制御」できるようです。
ヘファイスティオンの人格の誕生には、アレクサンドロスの母オリュンピアスが深く関わっていました。アレクサンドロスは幼少時に、オリュンピアスの浮気の場面を目撃しました。オリュンピアスは咄嗟に、助けて、とアレクサンドロスに呼びかけます。アレクサンドロスは刀をとってきて、母オリュンピアスの浮気相手の男を殺そうとします。その浮気相手の男は、有名なイッソスの戦いのモザイク壁画に描かれたアレクサンドロスによく似ています。しかし、さすがに幼少時だけあって、アレクサンドロスは男に刀を奪われてしまいます。浮気現場を目撃された男は、すっかり興奮し、もうマケドニアばかりか世界を征服してしまおう、と口走りますが、背後からオリュンピアスに刺されてしまい、首を切られて死亡します。
オリュンピアスはアレクサンドロスに、男に襲われたのだ、と説明します。アレクサンドロスの勇気を誉めるオリュンピアスですが、自分は刀を奪われて何もできなかった、とアレクサンドロスは自信を喪失しています。するとオリュンピアスは、人々を統べる孤独な王族には、誰にも言えない弱音や愚痴を聞いてくれる心の友が必要だ、とアレクサンドロスに言い、アレクサンドロスの額の蛇の形をした痣を消して、アレクサンドロスに鏡を見せ、友達のヘファイスティオンだ、と伝えます。
その時アレクサンドロスには、鏡に映る自分の姿が、自分に語りかけてくるのをはっきりと聞きました。鏡に映ったアレクサンドロスの別人格たるヘファイスティオンは、アレクサンドロスの弱さを嘲笑い、母のオリュンピアスは本当に殺害された男に襲われたのか、と挑発します。さらにヘファイスティオンは、アレクサンドロスがフィリッポス2世に似ておらず、本当にフィリッポス2世の子供なのか、実は殺害された男が本当の父ではないのか、とアレクサンドロスに問いかけます。ヘファイスティオンはどうしようもないが、アレクサンドロスはいい子だ、とディオドトスはエウメネスに言います。
「目覚めた」アレクサンドロスは、幹部候補生養成のための「ミエザの学校」に(おそらくは愛馬ブーケファラスに騎乗して)戻り、自分のせいで重傷を負ったハルパロスに謝罪し、自分が守ることを約束します。嫌われ者だとの自覚のあったハルパロスは、感激して涙を流します。そのハルパロスを助けた、「ミエザの学校」の近所の住民であるペウケスタスは、家臣ために必死に救命活動をし、涙を流したアレクサンドロスを慕い、「ミエザの学校」に近づいたところ、アレクサンドロスに礼を言われて、その後にアレクサンドロス自らペウケスタスを出迎え、ペウケスタスは「ミエザの学校」に入学することになります。ペウケスタスの母親は、蛇の形をした痣さえなければ、アレクサンドロスはまるで神だ、とまで言うくらい、すっかりアレクサンドロスに魅了されますが、冷めた感じの父親のほうは、アレクサンドロスはどこか人間離れしたところがあるものの、神なんかではない、と言います。
その頃エウメネスは、フィリッポス2世に命じられた「マケドニア式将棋」を開発し、居候しているアッタロス家の当主やその姪のエウリュディケとも「マケドニア式将棋」で勝負していました。エウメネスは「マケドニア式将棋」をフィリッポス2世にも披露し、勝負しますが、それを国軍副司令官のパルメニオンと、元老のアンティパトロスも見ていました。エウメネスに興味を持ったアンティパトロスは、エウメネスに自宅に来るよう何度か誘いますが、その都度エウメネスは断ります。この「マケドニア式将棋」は、慣れていくほど勝負がつきにくく、時間がかかるようになるのですが、これを各都市の首脳に贈答品として送ることにより、交流を図るとともに、効果のほどは確実でないにしても、各都市の首脳が将棋にはまって政治を思案する時間が削がれることをも、フィリッポス2世とエウメネスは意図していました。
紀元前340年、フィリッポス2世は、同盟都市カルディアを足掛かりとして、マケドニアによるギリシア統一を阻止しようとする、アテネ側の重要拠点であるペリントスとビザンティオンを攻略すべく軍を動員し、まずはカルディアで育ったエウメネスをカルディアに派遣します。エウメネスは、仇敵とも言うべき(といっても、今ではエウメネスにのほうはそれほど意識しておらず、ヘカタイオスのほうが一方的にエウメネスを敵視している感がありますが)、カルディアの実力者ヘカタイオスの出迎えを受け、ヘカタイオスは屈辱を感じつつ、エウメネスにへりくだってマケドニアからの指示を受けます。エウメネスは街に出て、旧友のトルミデスやニコゲネスと再会します。
ビザンティオンには、ペルシアとの戦いで勝利し、英雄視されているアテネの将軍カレスが、巧妙な手段を用い、マケドニアの監視をくぐって入城します。これにたいしてマケドニア側は、海と陸から、ほぼ同時にペリントスとビザンティオンを包囲します。このマケドニアによる包囲戦では、当時の最先端の攻城兵器が、それまでにないくらい様々に投入されたのですが、ペリントスとビザンティオンの守りは固く、マケドニアはこの2都市をなかなか攻略できない、というところで第7巻は終了です。
第7巻は、アレクサンドロスの秘密が中心に描かれ、その分だけ主人公のエウメネスの存在感がやや薄くなった感がありますが、アレクサンドロスとヘファイスティオンとの関係は、今後の話でたいへん重要になってきそうなので、詳しく描かれてよかったのだろう、と思います。アレクサンドロスの別人格がヘファイスティオンという設定は、第6巻を読んだ時点では、失敗なのではないか、とも思ったのですが、今後のアレクサンドロスの行動が、二重人格という観点から説得力のある描かれ方をされそうな予感もあり、楽しみのほうが大きくなってきました。
オリュンピアスは、アレクサンドロスとヘファイスティオンとが一つの肉体に同居することにより、いずれはフィリッポス2世を踏み越えることになる、と期待をしているようで、フィリッポス2世にたいする敵意も込められた複雑そうな感情を見せています。フィリッポス2世の暗殺にオリュンピアスが関わっているのではないか、と昔から推測されており、オリュンピアスのフィリッポス2世にたいする感情と、ヘファイスティオンの存在と、フィリッポス2世が本当は自分の父親とは違うのではないか、というアレクサンドロスの感情とが、フィリッポス2世の暗殺に重要な役割を果たすことになるのではないか、と予想しています。これまでの出来からして、おそらくは多くの読者を唸らせるようなフィリッポス2世の暗殺が描かれるのではないか、と期待しています。この第7巻もやはり面白く、今から第8巻の発売が楽しみですが、それは当分先になりそうなので、なんとも待ち遠しいものです。
https://sicambre.seesaa.net/article/200707article_28.html
第4巻の内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200708article_18.html
第5巻の内容は以下の記事にて、
https://sicambre.seesaa.net/article/200904article_10.html
第6巻の内容は以下の記事にて述べています。
https://sicambre.seesaa.net/article/201005article_25.html
第6巻にて、アレクサンドロスとヘファイスティオンが同一人物というか、アレクサンドロスの別人格がヘファイスティオンだと示されました。エウメネスの上司であるディオドトスによると、ヘファイスティオンの人格が表に出ている時はアレクサンドロスの人格は眠っているのにたいして、アレクサンドロスの人格が表に出ている時(ほとんどはこちらの方なのですが)は、ヘファイスティオンには「意識」があり、そのために、アレクサンドロスはヘファイスティオンの人格が表に出ている時の行動を知らないのですが、ヘファイスティオンはアレクサンドロスの人格が表に出ている時の行動を把握しています。アレクサンドロスの人格の愛馬ブーケファラスは、ヘファイスティオンの人格には懐かず暴れ、ヘファイスティオンは、ブーケファラスが落ち着かないようなら、アレクサンドロスを「起こそう」と考えます。ヘファイスティオンの方は、人格の交代をかなりの程度「制御」できるようです。
ヘファイスティオンの人格の誕生には、アレクサンドロスの母オリュンピアスが深く関わっていました。アレクサンドロスは幼少時に、オリュンピアスの浮気の場面を目撃しました。オリュンピアスは咄嗟に、助けて、とアレクサンドロスに呼びかけます。アレクサンドロスは刀をとってきて、母オリュンピアスの浮気相手の男を殺そうとします。その浮気相手の男は、有名なイッソスの戦いのモザイク壁画に描かれたアレクサンドロスによく似ています。しかし、さすがに幼少時だけあって、アレクサンドロスは男に刀を奪われてしまいます。浮気現場を目撃された男は、すっかり興奮し、もうマケドニアばかりか世界を征服してしまおう、と口走りますが、背後からオリュンピアスに刺されてしまい、首を切られて死亡します。
オリュンピアスはアレクサンドロスに、男に襲われたのだ、と説明します。アレクサンドロスの勇気を誉めるオリュンピアスですが、自分は刀を奪われて何もできなかった、とアレクサンドロスは自信を喪失しています。するとオリュンピアスは、人々を統べる孤独な王族には、誰にも言えない弱音や愚痴を聞いてくれる心の友が必要だ、とアレクサンドロスに言い、アレクサンドロスの額の蛇の形をした痣を消して、アレクサンドロスに鏡を見せ、友達のヘファイスティオンだ、と伝えます。
その時アレクサンドロスには、鏡に映る自分の姿が、自分に語りかけてくるのをはっきりと聞きました。鏡に映ったアレクサンドロスの別人格たるヘファイスティオンは、アレクサンドロスの弱さを嘲笑い、母のオリュンピアスは本当に殺害された男に襲われたのか、と挑発します。さらにヘファイスティオンは、アレクサンドロスがフィリッポス2世に似ておらず、本当にフィリッポス2世の子供なのか、実は殺害された男が本当の父ではないのか、とアレクサンドロスに問いかけます。ヘファイスティオンはどうしようもないが、アレクサンドロスはいい子だ、とディオドトスはエウメネスに言います。
「目覚めた」アレクサンドロスは、幹部候補生養成のための「ミエザの学校」に(おそらくは愛馬ブーケファラスに騎乗して)戻り、自分のせいで重傷を負ったハルパロスに謝罪し、自分が守ることを約束します。嫌われ者だとの自覚のあったハルパロスは、感激して涙を流します。そのハルパロスを助けた、「ミエザの学校」の近所の住民であるペウケスタスは、家臣ために必死に救命活動をし、涙を流したアレクサンドロスを慕い、「ミエザの学校」に近づいたところ、アレクサンドロスに礼を言われて、その後にアレクサンドロス自らペウケスタスを出迎え、ペウケスタスは「ミエザの学校」に入学することになります。ペウケスタスの母親は、蛇の形をした痣さえなければ、アレクサンドロスはまるで神だ、とまで言うくらい、すっかりアレクサンドロスに魅了されますが、冷めた感じの父親のほうは、アレクサンドロスはどこか人間離れしたところがあるものの、神なんかではない、と言います。
その頃エウメネスは、フィリッポス2世に命じられた「マケドニア式将棋」を開発し、居候しているアッタロス家の当主やその姪のエウリュディケとも「マケドニア式将棋」で勝負していました。エウメネスは「マケドニア式将棋」をフィリッポス2世にも披露し、勝負しますが、それを国軍副司令官のパルメニオンと、元老のアンティパトロスも見ていました。エウメネスに興味を持ったアンティパトロスは、エウメネスに自宅に来るよう何度か誘いますが、その都度エウメネスは断ります。この「マケドニア式将棋」は、慣れていくほど勝負がつきにくく、時間がかかるようになるのですが、これを各都市の首脳に贈答品として送ることにより、交流を図るとともに、効果のほどは確実でないにしても、各都市の首脳が将棋にはまって政治を思案する時間が削がれることをも、フィリッポス2世とエウメネスは意図していました。
紀元前340年、フィリッポス2世は、同盟都市カルディアを足掛かりとして、マケドニアによるギリシア統一を阻止しようとする、アテネ側の重要拠点であるペリントスとビザンティオンを攻略すべく軍を動員し、まずはカルディアで育ったエウメネスをカルディアに派遣します。エウメネスは、仇敵とも言うべき(といっても、今ではエウメネスにのほうはそれほど意識しておらず、ヘカタイオスのほうが一方的にエウメネスを敵視している感がありますが)、カルディアの実力者ヘカタイオスの出迎えを受け、ヘカタイオスは屈辱を感じつつ、エウメネスにへりくだってマケドニアからの指示を受けます。エウメネスは街に出て、旧友のトルミデスやニコゲネスと再会します。
ビザンティオンには、ペルシアとの戦いで勝利し、英雄視されているアテネの将軍カレスが、巧妙な手段を用い、マケドニアの監視をくぐって入城します。これにたいしてマケドニア側は、海と陸から、ほぼ同時にペリントスとビザンティオンを包囲します。このマケドニアによる包囲戦では、当時の最先端の攻城兵器が、それまでにないくらい様々に投入されたのですが、ペリントスとビザンティオンの守りは固く、マケドニアはこの2都市をなかなか攻略できない、というところで第7巻は終了です。
第7巻は、アレクサンドロスの秘密が中心に描かれ、その分だけ主人公のエウメネスの存在感がやや薄くなった感がありますが、アレクサンドロスとヘファイスティオンとの関係は、今後の話でたいへん重要になってきそうなので、詳しく描かれてよかったのだろう、と思います。アレクサンドロスの別人格がヘファイスティオンという設定は、第6巻を読んだ時点では、失敗なのではないか、とも思ったのですが、今後のアレクサンドロスの行動が、二重人格という観点から説得力のある描かれ方をされそうな予感もあり、楽しみのほうが大きくなってきました。
オリュンピアスは、アレクサンドロスとヘファイスティオンとが一つの肉体に同居することにより、いずれはフィリッポス2世を踏み越えることになる、と期待をしているようで、フィリッポス2世にたいする敵意も込められた複雑そうな感情を見せています。フィリッポス2世の暗殺にオリュンピアスが関わっているのではないか、と昔から推測されており、オリュンピアスのフィリッポス2世にたいする感情と、ヘファイスティオンの存在と、フィリッポス2世が本当は自分の父親とは違うのではないか、というアレクサンドロスの感情とが、フィリッポス2世の暗殺に重要な役割を果たすことになるのではないか、と予想しています。これまでの出来からして、おそらくは多くの読者を唸らせるようなフィリッポス2世の暗殺が描かれるのではないか、と期待しています。この第7巻もやはり面白く、今から第8巻の発売が楽しみですが、それは当分先になりそうなので、なんとも待ち遠しいものです。
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