霊長類の社会性の進化史

 霊長類の社会性の進化史についての研究(Shultz et al., 2011)が、先週号の『ネイチャー』に掲載されました。日本語の要約によると、この研究は以下のようなものです。これまで長年にわたって、霊長類の社会集団形成パターンの多様性への関心は強かったのですが、霊長類の社会性の進化史については、それほど注目されませんでした。この研究は、統計的手法の発展により、形質の変化を系統樹に重ねて系統立ててモデル化し、互いに相いれない複数の進化的仮説を検証することが可能になった、という近年の動向を踏まえて、ベイズ法による比較解析を適用し、霊長類の社会的行動の進化に関する、このような複数の理論を検証しました。

 その結果得られた結論は、単独で採餌する生活から大型の集団が直接進化し、その後に、こうした大集団からつがい生活や雄が一匹のハレム制が派生した、というものです。また、こうした社会性の発生には、夜行性から昼行性への生活様式の移行が関係している、とのことです。人類の社会性の変容については、形質人類学や考古学だけでは推定できるところが少なくなってしまうでしょうから、意義のある、また興味深い研究だと思います。また、人類のように多様な環境に進出した場合は、環境の影響がどのていどあるのか、ということも注目されます。


参考文献:
Shultz S, Barkai R, and Gopher A.(2011): Stepwise evolution of stable sociality in primates. Nature, 479, 219–222.
http://dx.doi.org/10.1038/nature10601

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