小倉慈司、山口輝臣『天皇の歴史09 天皇と宗教』
『天皇の歴史』全10巻の第9巻として、2011年9月に講談社より刊行されました。『天皇の歴史』は、8巻までが通史で、この9巻と次に刊行される最終巻の10巻は、特定の主題からの天皇の歴史が叙述されることになります。この9巻は、宗教と天皇の関係について、古代から現代まで概観されています。当然のことながら、天皇と宗教との関係については、古代から現代まで様々に変遷してきているわけで、宗教との関係に限定しても、天皇の「本質」を探るのは容易ではありませんが、そもそも、通時的な「本質」を見出そうとする試み自体に問題がある、と言えるのかもしれません。
本書の指摘で興味深いものは第二部に多く、とくに、明治維新における神仏分離について、じゅうらい過大評価されてきたのではないか、との見解には、考えさせられるところがありました。神仏分離は、これまで日本宗教史における分水嶺のように考えられてきたのですが、あまりにも明治維新における神仏分離を重視すると、キリスト教との和解や、信教の自由・宗教について考えるようになったことなど、もっと重大かもしれない分水嶺が目に入らなくなるのではないか、と本書では指摘されています。天皇と宗教との関係というよりは、日本史における宗教の問題について、色々と考えさせられる一冊でした。
本書の指摘で興味深いものは第二部に多く、とくに、明治維新における神仏分離について、じゅうらい過大評価されてきたのではないか、との見解には、考えさせられるところがありました。神仏分離は、これまで日本宗教史における分水嶺のように考えられてきたのですが、あまりにも明治維新における神仏分離を重視すると、キリスト教との和解や、信教の自由・宗教について考えるようになったことなど、もっと重大かもしれない分水嶺が目に入らなくなるのではないか、と本書では指摘されています。天皇と宗教との関係というよりは、日本史における宗教の問題について、色々と考えさせられる一冊でした。
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