『1492 コロンブス 逆転の世界史』

 フェリペ・フェルナンデス=アルメスト著、関口篤訳で、2010年11月に青土社より刊行されました。原書の刊行は2009年です。本書は、「遅れた」ヨーロッパが「進んだ」アジアを逆転し、ヨーロッパが主導権を握る、一体化した世界が到来する契機として、クリストバル=コロン(コロンブス)がアメリカ大陸圏に到達し、スペインがグラナダを攻略した1492年に見出し、その前後の世界各地の様相を描いています。

 個々の見解には専門家からすると異論が多いかもしれませんし、史料の偏在と研究史の蓄積と著者の専攻もあってか、ヨーロッパの記述に偏っている傾向は否めませんが、分離から合流へという大きな見通しのもと、これだけの広大な地域を一人で叙述しようという試みは壮大なもので、色々と興味深い見解も多く、本書を読んで得たものは少なくありませんでした。地域単位の縦割りの世界叙述ではなく、同時代史としての世界史という試みは、前近代ではなかなか難しいところがあるのですが、本書はそれにまずまず成功しているのではないか、と思います。

この記事へのコメント

子欲居
2011年10月04日 00:14
お久しぶりです。1492年はキリスト教勢力が、イスラム勢力をイベリア半島から最終的に駆逐した年でもあります。
2011年10月04日 21:02
これはお久しぶりです。本書では、イスラーム勢力がイベリア半島から駆逐されたことについて、やや詳しく述べられています。

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