初期人類の食性についての見直し

 初期人類の食性についての見直しについて論じた研究(Ungar, and Sponheimer., 2011)の要約を読みました。これまで、人類の進化における食性の変化については、肉食と同じく、歯のサイズ・形・頭蓋下顎形態が注目されてきました。しかし近年では、歯の微視的使用痕と安定同位体分析により、初期人類の食性の予想以上の多様性と複雑さが示唆されてきており、このブログでも、この問題については何度か取り上げてきました。
https://sicambre.seesaa.net/article/200611article_13.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200706article_21.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200805article_6.html
https://sicambre.seesaa.net/article/201106article_9.html

 こうした近年の研究によると、たとえば、パラントロプス属は頑丈な形態なので、種子や堅果類など固いものを食べていたのではないか、と推測されてきましたが、必ずしもそうではなく、果物を食べるなど、その食性は限定的・固定的ではなかったようで、機会主義的なところがあったのかもしれません。またこの研究では、人類が種子や堅果類などを食べていた証拠は、現時点では、最初期の人類(候補の生物種)が出現してから数百万年後のことであり、その間、食性の変化において一貫した傾向はない、とも指摘されています。初期人類の食性については、今後、より精密な分析例が蓄積されることにより、何度も見直しが必要になるのかもしれません。


参考文献:
Ungar PS, and Sponheimer M.(2011): The Diets of Early Hominins. Science, 334, 6053, 190-193.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1207701

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