歯の比較による、食料加工とホモ属の進化の関係
歯の比較から、ホモ属の進化と食料加工の関係について指摘した研究(Organ et al., 2011)が報道されました。人間の特色として、食料を加工して食べることが挙げられます。加熱処理も含めて食品加工は、栄養摂取を効率的にすることが多く、生存のうえで有利だったのではないか、と推測されます。この研究ではまず、人間と人間以外の霊長類の食事時間が比較され、人間はその体重から予測される1/10ほどの時間しか、食事に費やしていないことが指摘されます。
次にこの研究では、チンパンジーやアウストラロピテクス属やホモ属の臼歯のサイズが比較され、その体のサイズと比較して、ホモ=エレクトスの臼歯がいちじるしく小さくなっていることが示されます。一方、初期ホモ属と分類されてはいますが、アウストラロピテクス属ではないか、とも主張されているハビリスやルドルフェンシスは、体のサイズから予測される範囲内のサイズの臼歯を持っていました。このことから、食事時間と臼歯のサイズの減少は、ホモ属の進化の後に始まり、190万年前頃と推定されるエレクトスの出現の前かほぼ同時期に起きたのではないか、とこの研究では示唆されています。
食料加工と食事時間の減少については、因果関係を認めやすいでしょうが、臼歯のサイズと食料加工との関係は、的確に叙述するのが難しいとは思います。臼歯サイズの減少は遺伝的変異を前提としているでしょうから、大きな臼歯が食料を加工していなかったことの証拠になるわけではなく、人類がどの時点で食料を加工し始めたかというと、石器を使用してから後のことになる可能性が高いのではないか、と思います。その意味で、ホモ属が出現する少し前から、食料の加工が始まっていた可能性もあるとは思います。
いずれにしても、エレクトスの出現前に食料の加工は始まっており、それがエレクトスとその子孫のホモ属において、体重比からするとたいへん小さな臼歯を定着させる前提となったのでしょうが、小さな臼歯が選択された理由はとくになく、単なる偶然だったのかもしれません。もっとも、小さな臼歯の定着にあたっては、エネルギー効率などの明確な理由があった可能性も考えられますが。なお、火の使用については、グルジアへの人類の進出が180万年以上前までさかのぼる可能性が高くなったため、最初期のエレクトスやその前から存在していたハビリス(的な人類)が火を使用していた可能性も考えられますが、現時点では確証がありませんし、火を使用していたとしても、どのていどまで制御できていたのか、という問題もあります。
参考文献:
Organ C. et al.(2011): Phylogenetic rate shifts in feeding time during the evolution of Homo. PNAS, 108, 35, 14555-14559.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1107806108
次にこの研究では、チンパンジーやアウストラロピテクス属やホモ属の臼歯のサイズが比較され、その体のサイズと比較して、ホモ=エレクトスの臼歯がいちじるしく小さくなっていることが示されます。一方、初期ホモ属と分類されてはいますが、アウストラロピテクス属ではないか、とも主張されているハビリスやルドルフェンシスは、体のサイズから予測される範囲内のサイズの臼歯を持っていました。このことから、食事時間と臼歯のサイズの減少は、ホモ属の進化の後に始まり、190万年前頃と推定されるエレクトスの出現の前かほぼ同時期に起きたのではないか、とこの研究では示唆されています。
食料加工と食事時間の減少については、因果関係を認めやすいでしょうが、臼歯のサイズと食料加工との関係は、的確に叙述するのが難しいとは思います。臼歯サイズの減少は遺伝的変異を前提としているでしょうから、大きな臼歯が食料を加工していなかったことの証拠になるわけではなく、人類がどの時点で食料を加工し始めたかというと、石器を使用してから後のことになる可能性が高いのではないか、と思います。その意味で、ホモ属が出現する少し前から、食料の加工が始まっていた可能性もあるとは思います。
いずれにしても、エレクトスの出現前に食料の加工は始まっており、それがエレクトスとその子孫のホモ属において、体重比からするとたいへん小さな臼歯を定着させる前提となったのでしょうが、小さな臼歯が選択された理由はとくになく、単なる偶然だったのかもしれません。もっとも、小さな臼歯の定着にあたっては、エネルギー効率などの明確な理由があった可能性も考えられますが。なお、火の使用については、グルジアへの人類の進出が180万年以上前までさかのぼる可能性が高くなったため、最初期のエレクトスやその前から存在していたハビリス(的な人類)が火を使用していた可能性も考えられますが、現時点では確証がありませんし、火を使用していたとしても、どのていどまで制御できていたのか、という問題もあります。
参考文献:
Organ C. et al.(2011): Phylogenetic rate shifts in feeding time during the evolution of Homo. PNAS, 108, 35, 14555-14559.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.1107806108
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