加藤陽子『天皇の歴史08 昭和天皇と戦争の世紀』
『天皇の歴史』全10巻の第8巻として、2011年8月に講談社より刊行されました。信頼できる記録によるかぎりでは、私が生まれた時にはすでに、昭和天皇は歴代最長の在位期間の天皇で、その後さらに16年以上在位し、1989年1月7日に崩御しました。このようにたいへん長い在位期間の昭和天皇でしたが、本書では、昭和天皇の在位期間の2/3以上、昭和天皇個人の生涯でいうと、その後半生についてはほとんど触れられず、第二次世界大戦における日本の敗北までが描かれ、昭和天皇の即位前について、それなりに分量が割かれています。本書は、昭和天皇を中心として天皇と現実政治の在り様を描きつつ、20世紀前半の日本史概説となっており、なかなか充実した一冊になっていると思います。
もっとも、著者は最近では、「進歩的で良心的」な人々の一部?から厳しく批判されているようで(かといって、「愛国的」な人々から支持されるとはとうてい思えませんが)、私とは異なり、日本近現代史に詳しい人には、批判点が多く、不満の残る内容になっているのかもしれません。一般国民と、政・官・軍のエリート層などとでは、昭和天皇への視線がかなり異なること(前者が建前であり神聖なものであるとすると、後者は冷めた現実主義と言えるでしょうか)を、本書を読んで改めて思いましたが、国家統治のための天皇への崇敬の促進が、天皇機関説事件など、国家のエリート層を制約し、当初の予定になかった方へと向かわせてしまうような背景を生み出してしまったのではないか、とも思います。こうした問題は、形を変えても、つねに存在し得るだろうという意味で、現代日本社会でも無縁ではないのでしょう。
もっとも、著者は最近では、「進歩的で良心的」な人々の一部?から厳しく批判されているようで(かといって、「愛国的」な人々から支持されるとはとうてい思えませんが)、私とは異なり、日本近現代史に詳しい人には、批判点が多く、不満の残る内容になっているのかもしれません。一般国民と、政・官・軍のエリート層などとでは、昭和天皇への視線がかなり異なること(前者が建前であり神聖なものであるとすると、後者は冷めた現実主義と言えるでしょうか)を、本書を読んで改めて思いましたが、国家統治のための天皇への崇敬の促進が、天皇機関説事件など、国家のエリート層を制約し、当初の予定になかった方へと向かわせてしまうような背景を生み出してしまったのではないか、とも思います。こうした問題は、形を変えても、つねに存在し得るだろうという意味で、現代日本社会でも無縁ではないのでしょう。
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