『太陽にほえろ！』２３９話「挑発」１０

　人がよく優しいという殿下のキャラクターが活かされており、ゲストの富川澈夫氏の演技が作品の質を高めています。富川氏は、かつて誘拐・殺人未遂の罪で殿下に逮捕され、刑期を終えて出所してきた長尾という男を演じています。長尾は殿下の家にいつき、殿下に様々な嫌がらせをしますが、殿下はそれでも長尾を庇います。かつて、長尾は誘拐を認めたものの、殺人未遂は否定したのに、殿下の証言で殺人未遂も認定されて刑が重くなったのですが、殿下はその後、長尾に殺意があったかどうか、自信がもてなくなっていないので、長尾に負い目があったのです。

　長尾はついに殿下に殴りかかり、自分が罪を犯したと理解はしていたが、殿下を逆恨みすることによって自分を正当化しようとしていたのだ、と告白して泣き崩れます。心情を吐露した長尾を見て殿下も安堵し、二人は和解します。しかしこれも、じつは長尾の偽装で、殿下の信頼を得ることにより、殿下を次に予定していた強盗のアリバイ工作の証人に仕立てようとしていたのでした。長尾は強盗を実行し、殿下は長尾の思惑通り長尾のアリバイを証言しますが、最後にはそのトリックに気づき、長尾を逮捕します。

　けっきょくは長尾を更生させられなかったと落ち込む殿下を、けっして無駄ではなかった、とボスが殿下を励ますところで終了ですが、挑発→偽りの告白→犯罪が明かされ逮捕という難しい役割の長尾の行動が、演技の上手い富川氏により自然な感じで見られるので、話に無理なく入り込めます。これが下手な役者だと、不自然に見えて作品を壊すことになりますから、やはりゲストの演技も重要なのだなあ、と改めて思いました。