初期人類の生息環境

 初期人類の生息環境についての研究(Cerling et al., 2011B)の要約を読みました。初期人類の進化におけるアフリカのサバンナの役割への関心は高く、この1世紀ほど議論されてきました。現在有力な見解は、現生人類(ホモ=サピエンス)と現生チンパンジーの最終共通祖先は木の繁茂した環境に生息し、800~500万年前頃に分岐した後、人類は木の少ない環境に移り、直立二足歩行という移動形態と食生活の変化からの推測によると、初期人類は開けたサバンナへ移動していった、というものです。しかし、木本植物の被覆率の定量化が困難であるために、この問題は容易に解決できそうにありませんでした。

 この研究では、熱帯生態系における木本植物の被覆率は、炭素安定同位体(炭素12・炭素13)を用いることで定量化され得る、と主張されています。アフリカ東部のアワシュやオモ-トゥルカナ盆地の、後期中新世(約700万年前)以降の人類化石の出土した遺跡やその近くの遺跡から採取された、1300の古土壌から得られた炭素安定同位体比の分析から、ほとんどの遺跡で木本植物の被覆率は40%より低く、サバンナに似た環境であることが分かりました。初期人類の生息環境については議論が続いていますが、今後、別の分析でもさらに検証が進むことを期待しています。


参考文献:
Cerling TE. et al.(2011B): Woody cover and hominin environments in the past 6 million years. Nature, 476, 51–56.
http://dx.doi.org/10.1038/nature10306

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