フロレシエンシスについての総説的論文
“Journal of Human Evolution”の第57巻5号で更新世のフローレス人(ホモ=フロレシエンシス)についての特集が組まれたことを、以前このブログで取り上げ、
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_19.html
その時、「この特集号の諸論文については、何回かにわたってこのブログで取り上げる予定です」と述べたのですが、その後にこのブログで言及した特集号の論文は1本だけで、
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_22.html
今さらではあるものの、この特集号の総説的な論文(Morwood, and Jungers., 2009)の要約を読んだので、取り上げることにします。
この論文では、頭骨や歯や脳内の復元された鋳型などの分析から、インドネシア領フローレス島のリアンブア洞窟で発見された更新世のフローレス人を、病変の小型現生人類(ホモ=サピエンス)と主張する見解が退けられており、この特集号の刊行から2年後の現在も、病変現生人類説を主張する研究者はいますが、更新世のフローレス人を病変の現生人類とする見解は、やはり厳しいのではないか、と思います。この論文の著者たちは当初、88万年前かそれ以前にフローレス島に到達した、更新世フローレス人よりも大柄な人類が、島嶼化により、更新世末期のフローレス人に進化したのではないか、と考えていました。
ところが、リアンブア洞窟ではさらに更新世の人骨が発見され、それらも含めて検証すると、更新世フローレス人は明らかにアウストラロピテクス属ではないものの、アウストラロピテクス属に見られる原始的形態が多く認められ、広義のホモ=エレクトス(ホモ=エルガスターと分類されることも少なくない、アフリカの異論のない初期ホモ属なども含むのでしょう)の出現前に出アフリカを果たした小柄な人類の系統に属す可能性のほうが高い、と著者たちは考えるようになった、とのことです。これは、人類の最初の出アフリカは広義のエレクトスによってなされた、とする通説に見直しを迫る見解となります。このことに限らず、脳の大きさなど、更新世フローレス人は人類進化の通説を大きく書き換える可能性を秘めた、じつに興味深い存在で、今後も研究の進展に注目していこう、と考えています。
参考文献:
Morwood MJ, and Jungers WL.(2009): Conclusions: implications of the Liang Bua excavations for hominin evolution and biogeography. Journal of Human Evolution, 57, 5, 640-648.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2009.08.003
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_19.html
その時、「この特集号の諸論文については、何回かにわたってこのブログで取り上げる予定です」と述べたのですが、その後にこのブログで言及した特集号の論文は1本だけで、
https://sicambre.seesaa.net/article/200911article_22.html
今さらではあるものの、この特集号の総説的な論文(Morwood, and Jungers., 2009)の要約を読んだので、取り上げることにします。
この論文では、頭骨や歯や脳内の復元された鋳型などの分析から、インドネシア領フローレス島のリアンブア洞窟で発見された更新世のフローレス人を、病変の小型現生人類(ホモ=サピエンス)と主張する見解が退けられており、この特集号の刊行から2年後の現在も、病変現生人類説を主張する研究者はいますが、更新世のフローレス人を病変の現生人類とする見解は、やはり厳しいのではないか、と思います。この論文の著者たちは当初、88万年前かそれ以前にフローレス島に到達した、更新世フローレス人よりも大柄な人類が、島嶼化により、更新世末期のフローレス人に進化したのではないか、と考えていました。
ところが、リアンブア洞窟ではさらに更新世の人骨が発見され、それらも含めて検証すると、更新世フローレス人は明らかにアウストラロピテクス属ではないものの、アウストラロピテクス属に見られる原始的形態が多く認められ、広義のホモ=エレクトス(ホモ=エルガスターと分類されることも少なくない、アフリカの異論のない初期ホモ属なども含むのでしょう)の出現前に出アフリカを果たした小柄な人類の系統に属す可能性のほうが高い、と著者たちは考えるようになった、とのことです。これは、人類の最初の出アフリカは広義のエレクトスによってなされた、とする通説に見直しを迫る見解となります。このことに限らず、脳の大きさなど、更新世フローレス人は人類進化の通説を大きく書き換える可能性を秘めた、じつに興味深い存在で、今後も研究の進展に注目していこう、と考えています。
参考文献:
Morwood MJ, and Jungers WL.(2009): Conclusions: implications of the Liang Bua excavations for hominin evolution and biogeography. Journal of Human Evolution, 57, 5, 640-648.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2009.08.003
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