『太陽にほえろ!』52話「13日金曜日マカロニ死す」10

 殉職→新たな刑事の加入という『太陽にほえろ!』のパターンの始まりですが、プロデューサーによると、当初のメンバーで5年くらい続ける予定で始めたとのことで、マカロニ刑事を演じた萩原健一氏が降板を申し出たことが、その後の『太陽にほえろ!』の枠組みを決めたというわけです。萩原氏の降板理由としては、ボスを演じる石原裕次郎氏との対立が大きかったようですが、萩原氏は近年でも、石原氏は下手な役者で、ボスではなくブスと言ってやった、などと発言しています。まあ萩原氏も大根だとは思いますが、石原氏も萩原氏も、演技は上手いとはいえないものの、スター俳優としての華はじゅうぶんあると思います。

 さて、ストーリーですが、『太陽にほえろ!』の歴代の殉職の回では文句なしに一番の出来だと思います。後の殉職では過剰な演出が鼻につくところがあるのですが、マカロニ殉職の回はそういったところがなく、ストーリーもしっかりしているだけに、緊張感をもって面白く見ることができます。マカロニの発言が原因となってゴリさんが重傷を負い、マカロニは暴走して山さんに叱責され、命だけは粗末にするな、傍迷惑だからな、と山さんに冷たくあしらわれるものの、マカロニが犯人に殺されそうになったところを、命がけで救ったのは山さんでした。山さんによる命がけの救出に感動したマカロニは、刑事になってよかったと療養中のゴリさんに語りかけますが、その直後、帰宅途中に暴漢に刺されて死にます。

 未熟な若手刑事が叱責されて暴走し、ベテラン刑事を誤解していたのが、自分の危機を命がけで救ってくれたことにより、その誤解がとけ、刑事としての誇り・喜びを感得します。失敗→誤解・暴走→危機脱出→和解・成長という青春ドラマらしいストーリーがだれることなく描かれ、その直後の思いがけない悲劇だけに、強烈な印象を残します。幸福・安堵の直後またはそれが実現する直前の殉職という悲劇のパターンは、その後の殉職の回でも踏襲され、ジーパンは婚約直後、テキサスは本庁への栄転直前、ボンはボスから誇りに思うと誉められた直後、殿下は海外で手術・リハビリをした婚約者が帰国し再会する直前に殉職しています。良くも悪くも、その後の『太陽にほえろ!』の路線に大きな影響を及ぼした回でした。

この記事へのコメント

みら
2011年07月06日 10:13
こんにちわ

私は石原裕次郎ファンの世代ではないので、萩原健一同様「ブス」と思っていたほうかなあ。なぜこんなに人気があるの?と思っていたくらいなので。
当時の日本人にしては足が長くてスタイルがいいのがチャームポイントで、顔は「ブス」か「ブル」でピッタリかと(笑)
大根は・・劉さんのおっしゃる通りですね。それは当時スターの条件だったのです。(笑)


このドラマ、当初はこんな長寿になるとは本当に考えられていなかったんでしょうね、ファンが見守って成長させたドラマなんでしょう。

このように、大河もファンの意見を反映させて作りこんで欲しいですね。
2011年07月06日 23:55
スターに必要なのは華であって高度な演技力ではありませんからねぇ。

大河ドラマの制作陣も一般人のブログなどで情報収集をしているそうですが、芸能事務所や地元との関係など、色々としがらみがありそうですから、視聴者の意見を強く反映させることは難しいのかもしれません。
大沢悟
2012年07月01日 20:48
後日談の「マカロニを殺したやつ」での配役で犯人役を車邦秀(通り魔役を演じた)、その犯人を酒場の喧嘩で殺害してしまうチンピラ役を水谷邦久(レインボーマン)が演じていたらよりリアルな作品に仕上がっていたと思う。
2012年07月01日 21:20
マカロニ刺殺犯を演じたのは車邦秀氏だったのですか。恥ずかしながら知りませんでした。

後日談で犯人を演じた水谷邦久氏でにいことは知っていたのですが。

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