ヨーロッパにおけるネアンデルタール人から現生人類への移行と人口増加
ヨーロッパにおけるネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)から現生人類(ホモ=サピエンス)への移行期についての研究(Mellars, and French., 2011)の要約を読みました。なかなか興味深い研究のように思われますが、要約を読んだだけでは詳細が不明なので、後で全文を入手して読もうと考えています。この研究では、ヨーロッパの考古学的証拠から、ヨーロッパにおけるネアンデルタール人から現生人類への移行期において、現生人類の人口が一桁増加したことが示され、それがネアンデルタール人から現生人類への移行を促進した要因だったのではないか、と主張されています。
ヨーロッパにおけるネアンデルタール人から現生人類への移行は、近現代の知の在り様の起源地・中心とも言うべきヨーロッパでの出来事だけに、古人類学においてずっと関心の高い問題であり続けてきました。ヨーロッパのネアンデルタール人から現生人類への移行期における現生人類の人口増加が、考古学的証拠から推定できるという主張が認められるとしたら、次に問題となるのは、なぜ人口増加が起きたのかということです。
その点について、この研究でどのていど詳細に言及されているのか、全文を読んでみないと分かりませんが、この報道によると、現生人類の大規模な集落が、大量の道具や食べかすなどともに発見され、石器・宝飾品などもネアンデルタール人所産のものよりもはるかに手が込んでおり、こうした遺物・痕跡の統計分析により、現生人類の大幅な人口増加があった、と推定されたそうです。また、現生人類はネアンデルタール人よりも複雑な社会ネットワークを構築し、頭脳も発達していたと考えられる、とのことです。
現生人類のアフリカ単一起源説が圧倒的に優勢になって以降は、ネアンデルタール人と比較して、現生人類の側の技術革新や社会組織の発展と、ネアンデルタール人にたいする現生人類の潜在的知的資質の優位を強調する見解が主流になり、この研究も、そうした傾向に沿ったものと言えるように思います。ただ、ネアンデルタール人と現生人類との相違を、後者の前者にたいする優位という意味合いで強調する、こうした見解がどこまで妥当なのか、近年のネアンデルタール人「復権」の動向も踏まえて、今後も検証が必要ではなかろうか、と思います。
参考文献:
Mellars P, and French JC.(2011): Tenfold Population Increase in Western Europe at the Neandertal–to–Modern Human Transition. Science, 333, 6042, 623-627.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1206930
ヨーロッパにおけるネアンデルタール人から現生人類への移行は、近現代の知の在り様の起源地・中心とも言うべきヨーロッパでの出来事だけに、古人類学においてずっと関心の高い問題であり続けてきました。ヨーロッパのネアンデルタール人から現生人類への移行期における現生人類の人口増加が、考古学的証拠から推定できるという主張が認められるとしたら、次に問題となるのは、なぜ人口増加が起きたのかということです。
その点について、この研究でどのていど詳細に言及されているのか、全文を読んでみないと分かりませんが、この報道によると、現生人類の大規模な集落が、大量の道具や食べかすなどともに発見され、石器・宝飾品などもネアンデルタール人所産のものよりもはるかに手が込んでおり、こうした遺物・痕跡の統計分析により、現生人類の大幅な人口増加があった、と推定されたそうです。また、現生人類はネアンデルタール人よりも複雑な社会ネットワークを構築し、頭脳も発達していたと考えられる、とのことです。
現生人類のアフリカ単一起源説が圧倒的に優勢になって以降は、ネアンデルタール人と比較して、現生人類の側の技術革新や社会組織の発展と、ネアンデルタール人にたいする現生人類の潜在的知的資質の優位を強調する見解が主流になり、この研究も、そうした傾向に沿ったものと言えるように思います。ただ、ネアンデルタール人と現生人類との相違を、後者の前者にたいする優位という意味合いで強調する、こうした見解がどこまで妥当なのか、近年のネアンデルタール人「復権」の動向も踏まえて、今後も検証が必要ではなかろうか、と思います。
参考文献:
Mellars P, and French JC.(2011): Tenfold Population Increase in Western Europe at the Neandertal–to–Modern Human Transition. Science, 333, 6042, 623-627.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1206930
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