金子隆一『アナザー人類興亡史』

 技術評論社より2011年5月に刊行されました。副題は「人間になれず消滅した“傍系人類”の系譜」です。本書の特徴は、人類の進化を広い視点で概観していることで、人類の祖先とチンパンジーの祖先とが分岐した後だけではなく、哺乳類の進化にまでさかのぼり、人類の進化を位置づけています。そのこととも関連するのですが、一般向けの人類進化の書籍にしては、人類の定義と学説史にも詳しく言及されており、リンネにまでさかのぼって、生物の分類・人類の定義がどのように変わってきたのか、ということが解説されています。

 本書の内容は、近年の研究成果を踏まえたもので、目新しいところはさほどないのですが、おおむね穏当なものになっていると思います。また、一般向け書籍ながら、参考文献がなかなか充実しており、索引があるのもよいと思います。ただ、やや敷居の高いところがあり、人類進化についてあるていど予備知識のある人向けなのかな、とも思います。「ミトコンドリア・アダム」という用語など、疑問の残るところもありますが、一般向けの人類進化の書籍としては、かなりの良書と言えるのではないか、と思います。

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