藤井讓治『天皇の歴史05 天皇と天下人』

 『天皇の歴史』全10巻の第5巻として、2011年5月に講談社より刊行されました。淡々と史実の叙述が続き、いつ著者の独自の見解が述べられるのだろう、とやや戸惑いながら読み進めていたところ、最後まで淡々とした史実の紹介に終始し、正直なところ、期待外れだったというか、大いに困惑しました。もちろん、史実にたいする著者の評価は随所で述べられていますし、そもそも史実をどう認定するのか、それをどのように叙述するのか、ということも著者の価値判断によるのですが、それにしても、もう少し著者独自の見解をまとめて述べるところがあってもよかったのではないか、と思います。

 とはいえ、史実の叙述が続くので、勉強になるところが大いにありますし、この時代の朝廷について私が勉強不足ということもあるのですが、知らなかった史実も少なからずありました。本書を読むと、朝廷のしたたかさが印象に残るのですが、それは朝廷に関する文献が多く残っているからでもあり、当時の人々の多くは「したたか」に生きていたのでしょう。本書を読んで改めて気になるのは、信雄・家康との戦いが始まるまで、秀吉が任官していなかったことです。本書は天皇・朝廷を中心にした叙述となっているため、残念ながら秀吉の政権構想の変遷についてとくに検証されているわけではないので、この問題については、今後他の本・論文で調べていくつもりです。

この記事へのコメント

みら
2011年06月09日 01:37
こんばんわ

このタイトルでは、秀吉に関する新解釈や新解明とかを期待してしまいますね。

・・朝廷が「したたか」っていうのは、まあ一般的なイメージ通りですね。現代の役人もこんな体質を持ってますし職場では結構ここに泣かされてます(笑)

「したたか」って、「必要悪」同様、世間的に容認されているようでこの言葉で自分が評価されたら嫌ですね~(笑)
近世の、女郎の駆け引きのための恋文や、下級役人が身内にあてて書いた借金の申し入れとかも、やたらお願い攻撃でいかにもしたたかさ満載で嫌ですね。
・・・こんな手紙が多く残っているのは何故なんでしょうね。

と、近世の資料には面白みを感じないと思える理由の一つです。
なんだかロマンチックじゃないし。ドラマチックでもないし。超現実的ですよね。
まだ朝廷の詭弁のほうが面白いって事は「したたか」でもそれなりの段取りがないと・・あれば仕方ないような。

ちなみに私はしたたかに生きる人は芸達者に思えてある意味羨ましい気もします。自分にゃ出来ない芸当で・・。
最終的には直球型な自分(笑)

最近また転職を考えていて・・また履歴書書きでうんざりでぇす。
(愚痴でごめんなさい)
2011年06月10日 06:16
履歴書の作成は手書きだと面倒ですね。

最近ではパソコンで作成する人も増えてきましたが。

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