真核生物の淡水への進出時期

 真核生物の淡水への進出時期についての研究(Strother et al., 2011)が公表されました。この研究では、スコットランド北西部の高地にある先カンブリア時代のトリドニアン系頁岩で発見された10億年前の化石が報告されています。この微化石集団は、かつての湖底や珪砕屑性微生物マットに堆積したもので、有機質の壁を持つ長さ1ミリメートル近い多細胞生物からなる多様な集団とのことです。この微化石集団は淡水に生息していた単純な真核生物のようで、時々部分的に大気に触れていたのではないか、と考えられます。

 このことから、真核生物が海洋を抜け出て陸地で生活するように進化した時期は、じゅうらい考えられていたよりも早かったことが示唆される、と指摘されています。10億年以上前の生物の痕跡が残り、それを発見できることは稀で、今後も、生物進化の初期については、たいへん少ない手がかりで考察せざるを得ません。そのため、真核生物の陸上への進出時期といった重要な問題でも、今後大きく見解が変わってくる可能性は高いでしょう。当然のことではありますが、生物進化の初期と比較すると、不明なところが多いと言われる人類の進化は、データが詳細にそろっているなあ、と改めて思います。


参考文献:
Strother PK. et al.(2011): Earth’s earliest non-marine eukaryotes. Nature, 473, 505-509.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09943

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック