ローヤルゼリーの活性成分

 ローヤルゼリーの活性成分についての、富山県立大学の鎌倉昌樹講師の研究(Kamakura., 2011)が報道されました。ミツバチの集団における女王バチと働きバチの違いが、遺伝子ではなく栄養によるもので、ローヤルゼリーを食べた幼虫が女王バチへと分化することはよく知られていますが、ローヤルゼリー中の活性成分は、これまで明らかになっていませんでした。この研究では、セイヨウミツバチのローヤルゼリーの成分分析から、含まれるタンパク質の量と女王蜂になる個体数に相関があることが確認され、複数のタンパク質を個別に抽出し幼虫に投与して比べたところ、ロイヤラクチンというタンパク質だけが成長促進ホルモンの分泌量を増やし、女王蜂化を促していることが明らかになった、とのことです。

 ロイヤラクチンは以前から知られているタンパク質で、ラット肝細胞に上皮増殖因子に似た作用を及ぼす、とのことです。また、ロイヤラクチンはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)でも女王バチに似た表現型を誘導し、上皮増殖因子が関わるシグナル伝達経路を介して体のサイズを大きくし、卵巣の発生を促すそうです。鎌倉昌樹講師は今後、愛知県の養蜂家と連携し、研究室で成長させた女王蜂が、働き蜂のいる巣箱で本来の役割を果たせるのか実験するとのことで、この研究がミツバチの安定供給に寄与することが期待されます。


参考文献:
Kamakura M.(2011): Royalactin induces queen differentiation in honeybees. Nature, 473, 478–483.
http://dx.doi.org/10.1038/nature10093

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