ハビリスに関する分類の問題

 ホモ=ハビリスという分類の枠組みを見直そうとする研究動向について報道(Gibbons., 2011)されました。報道の冒頭しか読めていないのですが、長く最初のホモ属とされてきたハビリスは、むしろアウストラロピテクス属のほうに類似しているのではないか、と主張する近年の研究動向について言及されています。そうした動向のなかで、ハビリスの食料調達の範囲もまた、多くの研究者が最初の真のホモ属と認めるエレクトスのそれよりも、アウストラロピテクス属のそれのほうに似ており、後のホモ属に見られる、多様な環境で多様な食料を利用するような重要な適応は、ハビリスには見られなかったのではないか、と指摘する研究についてこの報道では言及されています。

 そもそも、ハビリスという分類自体に大きな問題があり、アウストラロピテクス属と分類するにはホモ属的特徴が認められるものの、議論なくホモ属と認められるエレクトス(アフリカの最初期のエレクトスをエルガスターと分類する見解も有力です)以降のホモ属とは異なり、ホモ属と分類するにはアウストラロピテクス属的特徴が認められる、という分類区分の困難な曖昧な人骨群を、ハビリスという種区分に便宜的に分類してきた、という事情があります。現在、ハビリスと分類されている人骨群が、本当に一系統にまとめられるのか、疑問が残りますが、そうではないとしても、現在ハビリスと分類されている人骨群の一部が属する系統が、現代人の祖先である可能性は高いだろう、と思います。


参考文献:
Gibbons A.(2011): Who Was Homo habilis—And Was It Really Homo? Science, 332, 6036, 1370-1371.
http://dx.doi.org/10.1126/science.332.6036.1370

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック