『よみがえる大河ドラマ~デジタルリマスター版 初期10作品~』

 先月、NHKのBSプレミアムで、大河ドラマ初期10作品のデジタルリマスター版が放送されました。大河ドラマの初期の作品はほとんど映像が残っておらず、1回のみ、もしくは総集編のみが残っていることがほとんどです。全話が残っている最古の作品は、1976年放送の『風と雲と虹と』で、偶然にも、現在のところ『風と雲と虹と』は、実質的に大河ドラマ史上最古の時代を扱った作品でもあります。ところが、『よみがえる大河ドラマ~デジタルリマスター版 初期10作品~』第3回で、1970年放送の『樅ノ木は残った』が、白黒放送での録画とはいえ、1話を除いてすべて保存されていることが明らかにされました。ただ、残念ながら、経年劣化がひどいようです。『よみがえる大河ドラマ~デジタルリマスター版 初期10作品~』を見て改めて思ったのは、マスターの保存状況が悪ければ、デジタルリマスター処理にも限界があるのだなあ、ということです。とくに、時代が古いということもありますが、白黒放送時代の作品は、デジタルリマスター版でもやや厳しいなあ、というのが率直な感想です。

 この放送を機に、大河ドラマの一覧を改めて見てみたのですが、初期の大河ドラマはかなり挑戦者精神旺盛なのだな、と思います。第1作からして、主役が井伊直弼で準主役が長野主膳という、一般には悪役扱いされてきただろう人物ですし、幕末の架空の三姉妹や、悪人とされてきた原田甲斐や、朝廷に対する反逆者の平将門や、戦国時代の一商人を主人公にするなど、すでに優れた原作が存在した場合もあったものの、当時としてはなかなかの冒険だったのではないか、と思います。もちろん、忠臣蔵や太閤記や義経のように、王道というか定番の題材の作品も多いのですが。近年では、さほど著名ではない人物を取り上げることもありますが、周囲の人物や舞台となる時代は定番というか固定的なことが多く、安定志向が以前よりも強くなっているのかな、とも思います。これは、1990年代前半の意欲的な路線(馴染みの薄い時代・地域を舞台としました)が挫折したことが要因なのでしょう。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック