イベリア半島北部の中部旧石器~上部旧石器時代移行期の気候

 イベリア半島北部の中部旧石器~上部旧石器時代移行期の気候についての研究(López-García et al., 2011)の要約を読みました。この研究では、イベリア半島北部のスペイン国アストゥリアス州にある、伯爵洞窟(Cueva del Conde)遺跡の発掘成果から、当時の古気候が推測されています。伯爵洞窟は、中部旧石器文化のムステリアン(ムスティエ文化)から上部旧石器時代のオーリナシアン(オーリニャック文化)への移行を示す遺跡として知られており、20世紀初めから発掘が行なわれていて、2001年移行は、オビィエド大学の研究チームによる組織的発掘が行なわれています。

 伯爵洞窟は、外部・入り口・回廊という三つの主要な区域に区分されており、放射性炭素年代測定により、外部は約39110±520年前、入り口は約38250±390~34730±500年前、回廊Aは約31540±400年前という結果が得られています。伯爵遺跡では小型脊椎動物化石が発見されており、それは少なくとも21種以上の、哺乳類・両生類・鱗のある動物から成ります。これらの小型脊椎動物が示唆しているのは、伯爵動物遺跡周辺の当時の景観は湿潤な草地と森林から成る斑状であり、当時の年間平均気温は現代より1.1度~4.4度低く、オーリナシアン期はムステリアン期よりも穏やかな気候だっただろう、ということです。


参考文献:
López-García JM. et al.(2011): Palaeoenvironment and palaeoclimate of the Mousterian–Aurignacian transition in northern Iberia: The small-vertebrate assemblage from Cueva del Conde (Santo Adriano, Asturias). Journal of Human Evolution, 61 1, 108-116.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2011.01.010

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