ミミズトカゲ類の進化系統樹上の位置づけ

 ミミズトカゲ類の進化系統樹上の位置づけについての研究(Müller et al., 2011)が公表されました。日本にはいないミミズトカゲ類は、地中生活に適応した肢のないトカゲの一群ですが、その分類と進化系統樹上の位置づけについては、意見が分かれていました。分子遺伝学の分野からは、ミミズトカゲ類はカナヘビ類におさまる、との分類が提示されていました。しかし、形態学の分野では、ミミズトカゲ類の肢のない長い体は共通祖先から受け継いだものであるとして、ヘビ類とまとめる分類が主流になっていました。

 この研究では、ドイツで出土した始新世のトカゲ化石の分析から、分子遺伝学での分類のほうが妥当なのではないか、と主張されています。この肢のある始新世のトカゲ化石は、化石産出で有名なドイツの始新世メッセル頁岩で発見されましたが、カナヘビ類とミミズトカゲ類のそれぞれの特徴をあわせ持っている、と判断されました。したがって、ミミズトカゲ類の無肢化はヘビ類のものとは無関係に進化したのであり、ミミズトカゲ類はヘビ類よりもカナヘビ類のほうと近縁なのではないか、ということになります。現存生物といえども、形態からの近縁関係の推定には難しいところもある、ということだとも思います。

参考文献:
Müller J. et al.(2011): Eocene lizard from Germany reveals amphisbaenian origins. Nature, 473, 364–367.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09919

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