ネアンデルタール人は北緯65度まで進出?
ロシアのウラル山脈の西山麓にある、北緯65度のByzovaya遺跡についての研究(Slimak et al., 2011)と報道(Balter., 2011)の要約を読みました。北緯65度はアイスランドとほぼ同じで、この研究では北極圏近くの遺跡とされています。この遺跡の骨と砂粒を、放射性炭素法および光刺激ルミネッセンス法で年代測定したところ、放射性炭素14年代で28500年前頃(較正した暦年代では34000~31000年前頃)との結果が得られました。どの骨を測定したのか、『サイエンス』の要約を読んだだけでは分からなかったのですが、この報道によると、解体されたマンモス・黒熊・ケブカサイとのことです。
このByzovaya遺跡で発見された石器は、中部旧石器文化のムステリアンとされました。ヨーロッパのムステリアンは、これまでネアンデルタール人のみの所産とされてきたので、この研究でも、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の進出範囲が、じゅうらい考えられていたよりも北方へ1000km拡大するのではないか、と主張されています。また、近年では旧石器遺跡の年代の見直しにより、ネアンデルタール人の遺跡もじゅうらいの推定よりも古くなる傾向にあり、Byzovaya遺跡が暦年代で34000~31000年前頃になることから、末期ネアンデルタール人の避難所は地中海沿岸などの南方ではなく、北方だったのではないか、とも推測されています。
Byzovaya遺跡がたいへん貴重であることは間違いないのですが、ヨーロッパとはいってもウラル山脈沿いですし、ムステリアンだからといって、その担い手がネアンデルタール人とは限らないでしょう。ネアンデルタール人以外の候補者となると、現生人類(ホモ=サピエンス)が最有力ですが、昨年公表されて注目を集めたデニソワ人と同系統の集団である可能性も考えられるでしょう。今後、ロシアの高緯度地域で、旧石器時代の遺跡の発見が増え、研究が進展することを期待しています。高緯度地域だと、40000年前くらいまでの人骨が発見されれば、DNA解析が成功する可能性が高いでしょうから、その意味でも大いに期待しています。
参考文献:
Balter M.(2011): Did Neandertals Linger in Russia's Far North? Science, 332, 6031, 778.
http://dx.doi.org/10.1126/science.332.6031.778
Slimak L. et al.(2011): Late Mousterian Persistence near the Arctic Circle. Science, 332, 6031, 841-845.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1203866
このByzovaya遺跡で発見された石器は、中部旧石器文化のムステリアンとされました。ヨーロッパのムステリアンは、これまでネアンデルタール人のみの所産とされてきたので、この研究でも、ネアンデルタール人(ホモ=ネアンデルターレンシス)の進出範囲が、じゅうらい考えられていたよりも北方へ1000km拡大するのではないか、と主張されています。また、近年では旧石器遺跡の年代の見直しにより、ネアンデルタール人の遺跡もじゅうらいの推定よりも古くなる傾向にあり、Byzovaya遺跡が暦年代で34000~31000年前頃になることから、末期ネアンデルタール人の避難所は地中海沿岸などの南方ではなく、北方だったのではないか、とも推測されています。
Byzovaya遺跡がたいへん貴重であることは間違いないのですが、ヨーロッパとはいってもウラル山脈沿いですし、ムステリアンだからといって、その担い手がネアンデルタール人とは限らないでしょう。ネアンデルタール人以外の候補者となると、現生人類(ホモ=サピエンス)が最有力ですが、昨年公表されて注目を集めたデニソワ人と同系統の集団である可能性も考えられるでしょう。今後、ロシアの高緯度地域で、旧石器時代の遺跡の発見が増え、研究が進展することを期待しています。高緯度地域だと、40000年前くらいまでの人骨が発見されれば、DNA解析が成功する可能性が高いでしょうから、その意味でも大いに期待しています。
参考文献:
Balter M.(2011): Did Neandertals Linger in Russia's Far North? Science, 332, 6031, 778.
http://dx.doi.org/10.1126/science.332.6031.778
Slimak L. et al.(2011): Late Mousterian Persistence near the Arctic Circle. Science, 332, 6031, 841-845.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1203866
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