フロレシエンシスの分岐分類学的分析
ホモ=フロレシエンシスの分岐分類学的分析についての見解(Trueman.,2010)の要約を読みました。2003年にインドネシア領フローレス島の更新世末期の地層から発見された人骨群が2004年に発表されると、出アフリカを果たしたのは解剖学的に現代人に近い人類(真のというか狭義のホモ属)のみで、ホモ=エレクトスとホモ=ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)の絶滅以降、ホモ=サピエンス(現生人類)は唯一の人類であり、年代が下ると人類の脳容量は増加する傾向にあるなどといった通説を覆すかもしれないということで、この人骨群が新たな人類種ホモ=フロレシエンシスなのか、それとも病変の現生人類なのか、さらには、新たな人類種だとして、どの人類種から分岐したのか、古人類学界で激論が展開されてきました。
この見解では、分岐分類学的分析が用いられ、フローレス島の更新世末期の地層から発見された人骨群の系統発生的位置づけが試みられています。その結果、2つの同じく可能性の高い系統樹が提示されましたが、いずれも病変現生人類説を支持しておらず、この人骨群は、新種ホモ=フロレシエンシスとされています。一方の系統樹によると、フロレシエンシスは186万年前頃のホモ=ルドルフェンシスよりも後で、166万年前頃のホモ=ハビリス(ハビリスの年代を190万年前頃とする見解にも触れられています)よりも前に出現した初期人類となります。
もう一方の系統樹によると、フロレシエンシスはハビリスの後に分岐した、となります。これはハビリスの定義にも関わってくる大問題であり、容易には解決しないでしょうが、現時点では、フロレシエンシスは、ハビリスと分類されているけれども、本当に一つの系統としてまとめられるのか疑問の残る雑多な初期ホモ属集団(アウストラロピテクス属的特徴とホモ属的特徴をともに有する中間的・移行的集団と述べるほうが妥当かもしれません)から分岐した、と考えるのがもっとも妥当であるように思います。熱帯環境なのでミトコンドリアDNAの解析は難しいでしょうから、この問題の解決のためには新たな人骨の発見が望まれます。
参考文献:
Trueman JWH.(2010): A new cladistic analysis of Homo floresiensis. Journal of Human Evolution, 59, 2, 223-226.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2010.01.013
この見解では、分岐分類学的分析が用いられ、フローレス島の更新世末期の地層から発見された人骨群の系統発生的位置づけが試みられています。その結果、2つの同じく可能性の高い系統樹が提示されましたが、いずれも病変現生人類説を支持しておらず、この人骨群は、新種ホモ=フロレシエンシスとされています。一方の系統樹によると、フロレシエンシスは186万年前頃のホモ=ルドルフェンシスよりも後で、166万年前頃のホモ=ハビリス(ハビリスの年代を190万年前頃とする見解にも触れられています)よりも前に出現した初期人類となります。
もう一方の系統樹によると、フロレシエンシスはハビリスの後に分岐した、となります。これはハビリスの定義にも関わってくる大問題であり、容易には解決しないでしょうが、現時点では、フロレシエンシスは、ハビリスと分類されているけれども、本当に一つの系統としてまとめられるのか疑問の残る雑多な初期ホモ属集団(アウストラロピテクス属的特徴とホモ属的特徴をともに有する中間的・移行的集団と述べるほうが妥当かもしれません)から分岐した、と考えるのがもっとも妥当であるように思います。熱帯環境なのでミトコンドリアDNAの解析は難しいでしょうから、この問題の解決のためには新たな人骨の発見が望まれます。
参考文献:
Trueman JWH.(2010): A new cladistic analysis of Homo floresiensis. Journal of Human Evolution, 59, 2, 223-226.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2010.01.013
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