映画『ペイルライダー』、『許されざる者』、『ミリオンダラー・ベイビー』

 いずれもクリント=イーストウッド氏が監督と主演を兼ねており、NHKのBSハイビジョンで放映されたものを録画して視聴しました。『ペイルライダー』と『許されざる者』はイーストウッド無双的な展開なのですが、ほとんどずっとイーストウッド無双だった1985年公開の『ペイルライダー』にたいして、1992年公開の『許されざる者』では、前半で主役の老いが描かれており、これはイーストウッド氏自身に老いの自覚が強くなったためなのかな、とも思うのですが、BSデジタル放送を視聴できるようになって以前よりも映画を見るようになったとはいえ、私は映画に詳しくないので、自信のある見解ではありません。

 『ペイルライダー』は、主人公の素性が最後まで明らかにならなかったのですが、最初から最後までほとんどずっとイーストウッド無双だったので、不気味さも漂わせていたほうが説得力を持たせられるだろうという意味で、主人公の素性を伏せたのはよかったのではないかと思います。『許されざる者』は、主人公も含めて主要人物の弱さが描かれ、友を失ってから主人公が覚醒するなど、王道的な展開になっているという意味で安心感があります。正直なところ、この二作品は私の好みの設定ではないのですが、それでもなかなか楽しめたのは、演出のよさのためでしょうか。また、両方の作品とも雄大な自然を背景とし、ひじょうに映像が美しいことも楽しめた一因です。

 『ミリオンダラー・ベイビー』は、内容についてまったく知らずに見始めたので、途中まではサクセスストーリーかと思ったのですが、後半はひじょうに重苦しい展開が続き、なんとも悲劇的な結末を迎えました。尊厳死という問題を扱ったこの作品はアメリカ合衆国で議論を呼んだそうですが、その他にも、主人公と牧師との会話にたいしては、宗教色の強いアメリカ社会では反発が大きかったのではないか、とも思います。この三作品のなかでは、『ミリオンダラー・ベイビー』がもっとも話として面白かったのですが、話としてはそれほど好みではない『ペイルライダー』と『許されざる者』も楽しめましたから、私はイーストウッド作品と相性がよいのかもしれません。

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