アメリカ大陸の初期の住民の航海技術

 アメリカ大陸最初期の住民の航海技術や海洋資源への依存についての研究(Erlandson et al., 2011)が公表されました。この研究では、カリフォルニア州の沖合いにあるチャネル諸島の三つの遺跡での発見物から、当時のこの地域の人類の航海技術や生計が推定されています。チャネル諸島の3遺跡の年代は12000~11200年前頃で、アメリカ大陸北部(圏内)の人類の痕跡としては、初期のものと言えるでしょう。

 これらの遺跡には、狩猟・漁に用いられたと思われる石器や、海洋性のものを含む動物の骨や貝殻が多数発見され、この地域の当時の住民は海洋資源に大きく依存していたのではないか、と指摘されています。サンタローザ島の遺跡からは、当時の住民が、海洋性動物のみならず、雁・鵜などの鳥も獲っていたことが分かりました。サンミゲル島の遺跡では、両面加工石器や大量の貝殻が発見されました。

 こうしたことからこの研究では、人類は海洋資源に依存しつつ、航海によりチャネル諸島へ殖民していったのではないか、と指摘されています。アメリカ大陸への人類の移住時期・経路をめぐっては、現在も議論が盛んですが、近年有力になりつつある見解は、アメリカ大陸最初期の人類は、アメリカ大陸西岸を海沿いに一気に南下したのではないか、というものです。この研究は、そうした見解と整合的と言えそうです。


参考文献:
Erlandson JM. et al.(2011): Paleoindian Seafaring, Maritime Technologies, and Coastal Foraging on California’s Channel Islands. Science, 331, 6021, 1181-1185.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1201477

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