読売新聞取材班『検証 日露戦争』

 中公文庫の一冊として、中央公論新社より2010年9月に刊行されました。本書の親本は、同じ題名で中央公論新社より2005年に刊行されていますが、それは2004~2005年にかけての読売新聞の連載記事「現代に生きる日露戦争」を、加筆・修正したうえで書籍化したものです。文庫化にあたって、欧米の研究者へのインタビューが割愛され、特別寄稿の横手慎二「日露戦争の歴史的意義」が新たに所収されています。

 本書は、日本人の日露戦争についての認識に大きな影響を与えているであろう、司馬遼太郎『坂の上の雲』を強く意識しているようで、『坂の上の雲』で提示されている歴史像や人物像のなかには、近年の研究成果によると異なるものが少ない、と度々指摘されています。本書で指摘されている「新たな」見解のなかには、すでに知っているものが少なくなかったのですが、日露戦争前のロシア帝国の政治情勢については、知らない見解も少なくありませんでした。本書は新聞連載が元になっているということもあり、深い内容というわけではありませんが、非専門家が日露戦争を知るうえでの手がかりになるでしょうし、なかなかの良書ではないか、と思います。

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