更新世の大規模旱魃
アメリカ合衆国南西部の、更新世における大規模旱魃についての研究(Fawcett et al., 2011)が公表されました。米国南西部では、過去2000年の間に、何十年も持続する旱魃が時々起こっていたことが知られていますが、長期の気候変動を予想するモデルシミュレーションでは、将来、気候がより温暖になると、これらよりはるかに長期間にわたる大規模旱魃が起こる可能性が示唆されています。
この研究では、ニューメキシコ州北部にある湖の堆積物コアの新しい解析結果から、そのような1000年単位の大規模旱魃が、更新世の温暖期の最も気温の高い時期に頻繁に起こっていたことが明らかになりました。このような大規模旱魃の期間の年平均気温は、現在の気温と同程度か、もっと高かったと推定されています。更新世中期と完新世の気候記録とを比較すると、多くの類似点が明らかになり、もし人為起源の温暖化が起こらなかったら、おそらく米国南西部は、すでに寒冷かつ湿潤な時期に入っていたと考えられる、とも指摘されています。
長期的には、地球の気温は低下していき、再び寒冷期に突入するのでしょうが、短期~中期的には、人為的要因による温暖化の影響は否定できず、現代の生活水準・経済規模・人口を維持できないような結果になる可能性は考えられます。その意味で、二酸化炭素の排出に偏向しているなどといった問題はあるにしても、地球温暖化が注目され、重要な問題として世界的に解決策が模索されるのは、間違っていないと思います。
もちろん、結果的に、人為的要因による温暖化が現在懸念されているほどの被害をもたらさない可能性もあるわけですが、このような問題は、結果が明らかになった時点では手遅れになることがほとんどですから、現時点で対策を立てるのは間違っていないでしょう。むしろ、現時点で対策を立てても手遅れなのではないか、との懸念さえあるのですが、長期的な気候変動の予測は難しく、手遅れではないことを願うしかありません。
当然のことながら、こうした気候変動は人類の移動に大きく影響を与えているのですが、この研究の対象になっている、更新世の温暖期の米国南西部には、人類はまだ進出していなかったでしょうから、直接人類の移動に影響を与えたわけではありません。ただ、気候が温暖化すれば人類にとって住みやすくなり、気候が寒冷化すれば人類にとって住みにくくなる、という意外と一般には根強そうな観念が間違っており、気候変動による人類の住みやすさの変化は地域ごとに異なるものだ、という当然の見解を改めて認識させてくれるという意味で、人類の移動の研究にも意義があるのではないか、と思います。
参考文献:
Fawcett PJ. et al.(2011): Extended megadroughts in the southwestern United States during Pleistocene interglacials. Nature, 470, 518–521.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09839
この研究では、ニューメキシコ州北部にある湖の堆積物コアの新しい解析結果から、そのような1000年単位の大規模旱魃が、更新世の温暖期の最も気温の高い時期に頻繁に起こっていたことが明らかになりました。このような大規模旱魃の期間の年平均気温は、現在の気温と同程度か、もっと高かったと推定されています。更新世中期と完新世の気候記録とを比較すると、多くの類似点が明らかになり、もし人為起源の温暖化が起こらなかったら、おそらく米国南西部は、すでに寒冷かつ湿潤な時期に入っていたと考えられる、とも指摘されています。
長期的には、地球の気温は低下していき、再び寒冷期に突入するのでしょうが、短期~中期的には、人為的要因による温暖化の影響は否定できず、現代の生活水準・経済規模・人口を維持できないような結果になる可能性は考えられます。その意味で、二酸化炭素の排出に偏向しているなどといった問題はあるにしても、地球温暖化が注目され、重要な問題として世界的に解決策が模索されるのは、間違っていないと思います。
もちろん、結果的に、人為的要因による温暖化が現在懸念されているほどの被害をもたらさない可能性もあるわけですが、このような問題は、結果が明らかになった時点では手遅れになることがほとんどですから、現時点で対策を立てるのは間違っていないでしょう。むしろ、現時点で対策を立てても手遅れなのではないか、との懸念さえあるのですが、長期的な気候変動の予測は難しく、手遅れではないことを願うしかありません。
当然のことながら、こうした気候変動は人類の移動に大きく影響を与えているのですが、この研究の対象になっている、更新世の温暖期の米国南西部には、人類はまだ進出していなかったでしょうから、直接人類の移動に影響を与えたわけではありません。ただ、気候が温暖化すれば人類にとって住みやすくなり、気候が寒冷化すれば人類にとって住みにくくなる、という意外と一般には根強そうな観念が間違っており、気候変動による人類の住みやすさの変化は地域ごとに異なるものだ、という当然の見解を改めて認識させてくれるという意味で、人類の移動の研究にも意義があるのではないか、と思います。
参考文献:
Fawcett PJ. et al.(2011): Extended megadroughts in the southwestern United States during Pleistocene interglacials. Nature, 470, 518–521.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09839
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