さかのぼる複雑な形態の生物の起源

 これまで、巨視的で複雑な形の生物が最初に出現したのは、5億7900万~5億6500万年前頃だと考えられてきました。これは、カナダのミステイクンポイント(ニューファンドランド・ラブラドル州)で数年前に発見された、深海性アバロン化石群集のことです。しかし、中国の藍田累層で新たに発見された海草様の形態を持つ一連の鮮明な化石は、6億年前頃にまでさかのぼる、と報告した研究(Yuan et al., 2011)が公表され、巨視的で複雑な形の生物の起源がさかのぼる可能性が高くなりました。

 この研究で報告された藍田生物相の分類学的多様性と形態の複雑さは、アバロン生物相に匹敵するものとされており、巨視的真核生物の形態的多様化が、これまで考えられていたよりも古い年代に起きていた可能性が示唆されています。こうした生物の起源についての見解が、今後も新たな発見により次々と覆されていくだろうということは常識と言ってよいでしょうが、5億年以上前の生物の化石が現代まで残り、それが発見される可能性を考えると、そう頻繁にあるものではないというのも常識であり、ひじょうに貴重な発見であることは間違いありません。


参考文献:
Yuan X. et al.(2011): An early Ediacaran assemblage of macroscopic and morphologically differentiated eukaryotes. Nature, 470, 390–393.
http://dx.doi.org/10.1038/nature09810

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