小島毅『江と戦国と大河 日本史を「外」から問い直す』

 光文社新書の一冊として、光文社より2011年1月に刊行されました。小島氏の著書については、これまでにもこのブログで、『靖国史観-幕末維新という深淵』
https://sicambre.seesaa.net/article/200803article_29.html
『足利義満 消された日本国王』
https://sicambre.seesaa.net/article/200803article_30.html
『織田信長 最後の茶会』
https://sicambre.seesaa.net/article/200909article_3.html
を取り上げてきました。

 『靖国史観-幕末維新という深淵』と『足利義満 消された日本国王』、とくに後者は、ふざけた感じの文章が目立ったのですが、『織田信長 最後の茶会』では、そうしたふざけた文章は激減しました。しかし本書では、『足利義満 消された日本国王』ほどではないにしても、ふざけた文章が目立ち、不快感は否めません。著者は、こうしたふざけた文章が面白いと考えているようですが、勘違いも甚だしいと思います。編集者は注意しなかったのでしょうか。著者はそれほどの大物というわけではないでしょうから、遠慮する必要はないはずです。

 さて、本書の内容についてですが、小島氏の他の著書にも見られるように、「日本史」を「東アジア」という枠組みで見直すという観点から、戦国時代の事象や人物が叙述されていくのですが、体系的な説明という点では弱く、散漫な感じは否めません。とはいえ、個々の見解自体には面白いものもあります。また本書は、表題が「大河」であることから、大河ドラマについての著者の見解がもう一つの柱となっています。著者は、昔からの大河ドラマのファンで声が大きい人によくあるように、近年の大河ドラマには不満が多いようです。私も、DVDなどで昔の大河ドラマを視聴する機会が多くなるにつれて、そうした見解にも妥当なところが少なくないな、と思うようになりました。

 信康事件について通俗的な解釈が提示されていたり、前近代の日本の名前についての薀蓄に詰めの甘いところが見られたりすることから推測すると、著者は、戦国時代にかぎらす「日本史」を「東アジア」という枠組みで見直すという意欲はあるものの、個々の事象・事件の考証は些末なことなので、あまり意義がないと考えているのかな、とも思います。著者は、来年の大河ドラマで取り上げられる平清盛を題材に新書を執筆する意欲があるようですが、「日本史」を「東アジア」という枠組みで見直すという著者の観点からすると、清盛は格好の対象となりそうで、刊行されたら読むつもりです。

 本書が今年の大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』に便乗した関連本であることは明らかで、著者は江にはほとんど興味がなさそうなことも窺えます。そうしたこともあってか、正直なところ、上記の3冊と比較して内容がかなり薄いのは否めません。とはいえ、著者の薀蓄には相変わらず参考になるものもあります。私は著者の見解には批判的なことが多く、批判するために読んでいるというところが多分にありますが、それも、読んで得るものが少なくないためです。この点では、古人類学のリチャード=クライン氏も同様なのですが、小島氏には失礼ながら、クライン氏にたいするほどの敬意は抱いていません。それは、小島氏のふざけた感じの文章も一因となっています。

 それにしても、近所のさほど大きくない書店でも、大河ドラマ『江~姫たちの戦国~』の関連本のコーナーが設けられているくらいですから、出版業界の『江~姫たちの戦国~』で儲けようという意欲が強く伝わってきますし、それだけ『江~姫たちの戦国~』が高い視聴率をとることが予想・期待されているということでもあるのでしょう。出版業界にとって、今のところ『江~姫たちの戦国~』の平均視聴率が20%を超えているとはいっても、やや物足りない数字なのかもしれませんが、江が結婚して本格的なホームドラマになってからは、視聴率が上昇する可能性もあるかな、と予想しています。

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