後期下部旧石器時代のレヴァント社会

 動物考古学などの成果から、後期下部旧石器時代のレヴァント社会について分析した研究(Stinera et al., 2011)の要約を読みました。この研究では、イスラエルのクエセム洞窟の後期下部旧石器時代の層(40万~20万年前頃)で発見された骨や遺物について分析されています。クエセム洞窟の石器は、末期アシューリアン(アシュール文化)に分類されます。クエセム洞窟で出土した大型哺乳動物の起源は、おもにユーラシアにあり、比較的寒冷で湿潤な気候条件に適応していました。

 動物考古学の調査結果から、40万~20万年前頃のクエセム洞窟の人類は、大型獣を狩り、炉床で大型獣の死体を処理し、肉を共有していた、と考えられます。これらは、同じレヴァントの中部旧石器時代および上部旧石器時代の遺跡で見られるパターンと、似たところもあります。また、クエセム洞窟を利用していた後期下部旧石器時代の人類が、炉床を頻繁に再建指定ことも窺えます。しかし、カットマークの分析などクエセム洞窟の大型獣の分析から、40万~20万年前頃のクエセム洞窟の人類は、洞窟に死体を持ち込むまで、栄養価の高い部位を切り出して食べてはいなかったと推測され、これは同じレヴァントの中部旧石器時代および上部旧石器時代の遺跡で見られるパターンとは異なります。これは、時代による社会構造の変化を反映しているのではないか、と思います



参考文献:
Stiner MC, Gopher A, and Barkai R.(2011): Hearth-side socioeconomics, hunting and paleoecology during the late Lower Paleolithic at Qesem Cave, Israel. Journal of Human Evolution, 60, 2, 213-233.
http://dx.doi.org/10.1016/j.jhevol.2010.10.006

この記事へのコメント

イリヤのファン
2011年01月17日 08:55
管理人さん、お久しぶりです。
私も大河ドラマ好きですので、最近は近くのレンタルショップで旧作のDVDを借りて見ています。
今見ている作品は太平記です。これが、役者はみんな上手いし、ストーリーは重厚でありながら無理がない。名作・傑作と評するにふさわしいです。(アマゾンの評価なんかも確かに高いです。)よかったら見てください。
太平記にはまっているせいか、なおさら今の大河が陳腐に思えてしまいます。人の好みはそれぞれですが、どうもホームドラマチックに仕立てたり、笑いを取り入れようとした作品は好きになれません。
2011年01月17日 23:32
これはお久しぶりです。一応こちらで返信します。

『太平記』は、つまらないと思ったわけではなく、全話見たのですが、どうもあまり印象に残りませんでした。今見れば、評価ががらりと変わるかもしれません。

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