新旧の必須遺伝子

 必須遺伝子についての研究(Chen et al., 2010)が公表されました。これまで一般的には、人間が生きるために不可欠な遺伝子は古くからのものであり、それらは進化の過程でずっと保存されている、と考えられてきました。しかしこの研究では、ショウジョウバエ属12種のゲノムを比較した結果、3500~300万年前頃にショウジョウバエ属のゲノムに取り込まれた195個の新しい遺伝子を発見し、それらのうち3分の1が生存に欠かせなくなっていることが明らかになった、と指摘されています。

 この研究によると、ショウジョウバエ属のゲノムからこれらの遺伝子を削除すると、臓器形成障害やパターン形成障害など様々な細胞・発達障害が起こる、とのことですが、蛹の時期および幼虫の時期はとくに、これらの遺伝子を失うと大きな影響を受けるようで、この段階の死亡率がもっとも高かったそうです。こうしたことからこの研究では、人間が生きるためには、新しい遺伝子も古い遺伝子と同様にきわめて重要なのではないか、と指摘されています。


参考文献:
Chen S, Zhang YE, and Long M.(2010): New Genes in Drosophila Quickly Become Essential. Science, 330, 6011, 1682-1685.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1196380

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