大津透『天皇の歴史01 神話から歴史へ』
『天皇の歴史』全10巻の第1巻として、2010年11月に講談社より刊行されました。この書名は、明らかに、40年以上前の中公版『日本の歴史』の第1巻を意識したものでしょう。井上光貞『日本の歴史1 神話から歴史へ』は、シリーズものの歴史書としては異例の売れ行きだったそうです。この『天皇の歴史』は、第1巻~第8巻までが時代順の通史的役割を担い、第9巻と第10巻は、通史ではまとまった叙述の難しい、宗教・芸能と天皇との関係が取り上げられます。毎日新聞では、著者へのインタビュー記事も掲載されています。
http://mainichi.jp/enta/art/news/20101201dde018040022000c.html
本書は第1巻ということで、天皇の歴史の始まりから説き起こされることになるのですが、本書ではそれが邪馬台国・卑弥呼の時代からとなっています。ただし、これは卑弥呼を記紀に見える特定の人物に比定するということではなく、そうした比定という行為自体にあまり意味がないだろう、とされています。これは私も同感で、卑弥呼の存在した3世紀前半~半ばに、大和に広域的な政治権力の中心が存在し、それが漢文史料に見える邪馬台国である可能性は高く、また後の大和王権・律令国家につながるのだと思いますが、世襲的な王位継承制度が3世紀半ばの時点で確立していたのかというと、疑問です。
本書は、卑弥呼の時代から天武・持統朝までを対象とし、その大半の時代は、いわゆる大化前代となります。近年の歴史学においては、大化以降の時代と比較して、史料的制約がたいへん厳しいことから、大化前代の研究が停滞傾向にありますが、そうした状況で、本書のように一線級の研究者が大化前代について一般向けに詳しく述べているのは、ひじょうに貴重なことだと思います。著者の専攻は大化前代ではないため、先行研究の紹介・整理が主体になっているところはありますが、それら先行研究にたいして著者の見解も述べられており、一般向け書籍としてなかなかの出来になっているのではないか、と思います。
http://mainichi.jp/enta/art/news/20101201dde018040022000c.html
本書は第1巻ということで、天皇の歴史の始まりから説き起こされることになるのですが、本書ではそれが邪馬台国・卑弥呼の時代からとなっています。ただし、これは卑弥呼を記紀に見える特定の人物に比定するということではなく、そうした比定という行為自体にあまり意味がないだろう、とされています。これは私も同感で、卑弥呼の存在した3世紀前半~半ばに、大和に広域的な政治権力の中心が存在し、それが漢文史料に見える邪馬台国である可能性は高く、また後の大和王権・律令国家につながるのだと思いますが、世襲的な王位継承制度が3世紀半ばの時点で確立していたのかというと、疑問です。
本書は、卑弥呼の時代から天武・持統朝までを対象とし、その大半の時代は、いわゆる大化前代となります。近年の歴史学においては、大化以降の時代と比較して、史料的制約がたいへん厳しいことから、大化前代の研究が停滞傾向にありますが、そうした状況で、本書のように一線級の研究者が大化前代について一般向けに詳しく述べているのは、ひじょうに貴重なことだと思います。著者の専攻は大化前代ではないため、先行研究の紹介・整理が主体になっているところはありますが、それら先行研究にたいして著者の見解も述べられており、一般向け書籍としてなかなかの出来になっているのではないか、と思います。
この記事へのコメント
以前この記事関連で投稿しました。この書籍、うちの近所の書店では見かけません。
このシリーズ期待しております。続巻待ってみます。
NHK大河ドラマが子どものころから好きで、本ブログの記事も拝読しております。
他の記事も拝見しております。コメントするときは、主に過去記事にコメントするかも知れません。
講談社から刊行されているということもあってか、近所のそこそこの大きさの書店にも置いてありました。
レビュ―期待しております。 今度気を付けて見てみます。