フロレシエンシスの生息環境

 フロレシエンシスの生息環境についての研究(Westaway et al., 2009)の概要を読みました。この研究では、ホモ=フロレシエンシス人骨が発見された、インドネシア領フローレス島のリアンブア洞窟の更新世の堆積層が分析され、人類と自然環境との長期にわたる相互関係を調べる手がかりを提供している、と指摘されています。年代はまだ確定したとは言えないものの、リアンブア洞窟の更新世の地層では、95000年前以降に人骨や石器など人類の痕跡が発見されています。

 この研究では、堆積層の分析から、100000~95000年前・74000~61000年前・18000~17000年前には、フローレス島の降雨量は多く、生物の活動も活発だったのではないか、と推測されています。一方、94000~75000年前と36000~19000年前のフローレス島は、前期の期間と比較して乾燥していのではないか、と推測されています。更新世末期のフローレス島の自然環境はこのようにかなり変化し、フロレシエンシスはその変化に対応する能力を備えていたのではないか、とされています。

 フロレシエンシスは、おそらくは100万年以上前にフローレス島に到達した人類の子孫で、その間の環境変化にも対応して生き残ってきた人類種だったのでしょう。リアンブア洞窟では、完新世の地層ではフロレシエンシスの人骨は発見されず、ホモ=サピエンス(現生人類)の人骨しか発見されなくなりますから、更新世末に絶滅したと考えられます。長期の環境変化に対応してきたフロレシエンシスが絶滅した理由となると、どうしても現生人類の影響を想定したくなるのですが、フローレス島では更新世末期に噴火があったそうですから、現生人類の影響ではなく、噴火による絶滅も考えられます。


参考文献:
Westaway KE. et al.(2009): Homo floresiensis and the late Pleistocene environments of eastern Indonesia: defining the nature of the relationship. Quaternary Science Reviews, 28, 25-26, 2897-2912.
http://dx.doi.org/10.1016/j.quascirev.2009.07.020

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