C.W.マリーン「祖先はアフリカ南端で生き延びた」

 『日経サイエンス』2010年11月号の記事です。195000~123000年前頃の寒冷期である海洋酸素同位体ステージ6において、現代人の祖先である当時のアフリカの人類にとって、アフリカ南端は数少ない退避所になったのではないか、と推測されています。また、当時のアフリカ南端の人類には、すでに象徴的行動が認められるなど、現代人と同じような精神性があっただろう、ということも指摘されています。その具体的な証拠を提供するのが、アフリカ南端にあるPP13B洞窟です。この記事での見解は、このブログでも紹介した研究を踏まえたものなっています。
https://sicambre.seesaa.net/article/200710article_24.html
https://sicambre.seesaa.net/article/200909article_16.html

 ただ、編集部の問題なのかもしれませんが、「アフリカ南端の海沿いにいた集団だけが海の幸を利用して生き残った」との見出しはかなり問題があるように思います。また、PP13B洞窟では海洋酸素同位体ステージ6の人骨は発見されていないと記憶していますので、この時期のPP13B洞窟の住人が現生人類である可能性は高いでしょうが、それ以外の人類が居住していた可能性も、考慮しておく必要があるでしょう。この記事で指摘されているように、アフリカ南端が寒冷期の人類(おそらくは現生人類)にとった退避所となった可能性は高いでしょうが、アフリカでの発掘が東部と南部に偏っている現状を考えると、今後意外な地域で、海洋酸素同位体ステージ6の現生人類の重要な痕跡が発見される可能性は低くないでしょう。

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