鈴木眞哉『戦国軍事史への挑戦』

 歴史新書の一冊として洋泉社より2010年6月に刊行されました。戦国時代の軍事面での基本的な事柄について、著者が疑問に思ったことや、根強く浸透してしまっている誤解を訂正することが主題となっています。戦国時代の戦いで有効な武器は何だったのかという問題について、同時代の「戦闘報告書」に依拠した解説は、正直なところ、過去の著書のネタの使い回しといった感がありますし、鈴木氏の著書にそうした過去のネタの使い回しが目立つことは否定できないだろう、と思います。

 とはいっても、本書では、戦国時代の軍の構成や動員の実態や規律といった軍事面での基本的な事柄について、新書という形式の範疇ではありますし、著者自身が断りを入れているように、著者にもよく分からないとして結論が提示されていないところも多々あるものの、丁寧に述べられていて、直接的に得るものはさほど多くないとしても、今後の調査の方向性が示されたという意味で、間接的に得るものは少なくなかったように思います。軍の構成や動員の実態といった戦国時代の軍事面での基本的な事柄は、一般にはほとんど知られていないでしょうし、学界でも、それほど関心の高い問題にはなっていないでしょうから、そうした基本的な事柄に不明な点が多いことを一般に示したという意味で、本書の意義は小さくないように思います。

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