5万年前近くまでさかのぼるニューギニアにおける人類の痕跡

 5万年前近くまでさかのぼる、ニューギニア島における人類の痕跡についての研究(Summerhayes et al., 2010)が公表されました。まだ要約しか読んでいないのですが、これはひじょうに注目すべき研究ではないか、と思います。この研究によると、ニューギニア島高地の49000~36000年前頃の遺跡で、人類にとって食資源となり得るタコノキやイモやパイナップルに似た果物とともに、石器が出土している、とのことです。現在のニューギニア島は、当時オーストラリア大陸と陸続きで、サフルランドを形成していました。

 要約では、ニューギニア島高地の49000~36000年前頃の遺跡で出土した石器のなかには、木を取り除くのに使われたと思われるものも含まれており、サフルランドの初期の住人は、有用な植物の成長を促すために森林の一部を切り開いたのではないか、と示唆されています。要約を読んだかぎりでは、その根拠がよく分からなかったので、いつか国会図書館に行って全文を読んでみよう、と考えています。栽培というか植物資源の管理は、5万年以上前の中期石器時代のアフリカにおける、大きな社会的革新のなかで行われていた可能性が指摘されています(Mellars.,2006)。これはまだ証明されたとは言えないでしょうが、植物資源の管理という発想は、現生人類(ホモ=サピエンス)の社会において早くから存在し、それほど特異ではないというか、わりと思いつきやすいものだった可能性が高いのではないか、と思います。

 そう考えると、植物資源の管理の発展形態の一例と言える農耕が、世界各地で独自に始まったことは当然とも言えます。今後、アフリカをはじめとして世界各地で発掘が進めば、5万年以上前といった、通説をずっとさかのぼるような年代での、原初的な農耕の痕跡が見つかる可能性もあるのではないか、と私は考えています。ただ、安定した温暖な気候の完新世とは異なり、不安定な気候の更新世では、たとえ原初的な農耕が行われたとしても、期間は短く、社会を大きく変えるほどの影響はなかったのではないか、と思います。その意味では、更新世に原初的な農耕が行なわれていたとしても、その痕跡を確認するのはきわめて難しい、と言えるでしょう。


参考文献:
Mellars P.(2006): Why did modern human populations disperse from Africa ca. 60,000 years ago? A new model. PNAS, 103, 25, 9381-9386.
http://dx.doi.org/10.1073/pnas.0510792103
関連記事

Summerhayes GR. et al.(2010): Human Adaptation and Plant Use in Highland New Guinea 49,000 to 44,000 Years Ago. Science, 330, 6000, 78-81.
http://dx.doi.org/10.1126/science.1193130

この記事へのコメント

kuroneko
2010年10月26日 23:24
中国で10万年前の現生人類が出土という記事がでましたよ(PNAS10/25)、とりあえず10万年、のデータが増えつつあるんでしょうか
2010年10月27日 00:01
私も先ほど知ったところです。時間があれば、明日にでも記事を公開しよう、と考えています。

この記事へのトラックバック